能力の低さを職場全員にメールで送信
損保会社メール叱責事件
(第1審 東京地裁平成16年12月1日判決)
(控訴審 東京高裁平成17年4月20日判決)
<事件の概要>
損保会社の課長代理としてサービスセンター(SC)に勤務する原告は、その部署のリーダーから所長(被告)に対し力不足である旨のメールを送信され、これを受けた被告は、次の本件メールを原告及び職場の十数人全員に対し送信した。
「意欲がない、やる気がないなら会社を辞めるべきだと思います。当SCにとって迷惑そのものです。あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。これ以上迷惑をかけないでください」
これに対し原告は、本件メールは名誉感情を害するパワーハラスメントに当たるとして、被告に対し慰謝料100万円を請求した。
<第1審判決要旨>
本件メールの内容は、原告に対する上司としての評価であり、送信された相手も原告と同じユニットの従業員であるから、原告の業務遂行状況は認識していたものであり、原告の社会的評価を客観的に低下させる具体的な事実を摘示しているとはいえない。
本件メールは、上司の叱責として相当強度のものと理解でき、これを受ける者としては相当のストレスを感じることは間違いないが、この表現だけから直ちに業務指導の範囲を逸脱したもので遵法とするのは無理がある。
被告が他の従業員にまで送信する必要がないという考え方もできるが、ことは業務指導を行う上司の裁量の範囲内であり、原告に対する人格権の侵害になるとまで断ずることはできない。
本件メールの中には、退職勧告とも、会社にとって不必要な人間であるとも受け取られるおそれのある表現が盛り込まれており、この表現自体は正鵠を得ている面がないではないにしても、人の気持ちを逆撫でする侮辱的言辞と受け止められても仕方のない他の部分とも相まって控訴人(原告)の名誉感情を徒に毀損するものであり、その表現において許容限度を著しく超え、相当性を欠くものであって、控訴人に対する不法行為を構成するというべきである。
本件メールの目的は、控訴人を叱咤督促する趣旨であったと窺え、その目的は是認できるのであって、被控訴人(被告)にパワーハラスメントの意図があったとまでは認められない。
本件メールの送信目的、表現方法、送信範囲等を総合すると、本件不法行為による控訴人の精神的苦痛を慰謝する金頼としては5万円が相当である。
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