強迫的な退職勧奨
<事例>
会社では人件費の圧縮のため高年齢社員の退職勧奨を行っており、被勧奨者の太郎さんは頑なに拒否していました。
はじめはいろいろな役職者が穏やかに説得していたのですが、太郎さんが聞く耳を持たないため、説得もなかば強迫的なものになっていきました。
そして、とうとう太郎さんは退職願を提出したのですが、退職ではなく解雇扱いにするように要求しました。 |
本件の場合、会社の退職勧奨は本来の勧奨の域を超えていると考えられ、そうであれば、太郎さんは退職願を取消すことができますし、会社の退職勧奨は解雇通告として取り扱われます。
解雇と退職の違いは、労働者と使用者双方に大きな違いがあります。
解雇について、会社は労働基準監督署長の予告除外認定を受けない限り、解雇予告、または解雇予告手当の支払が必要になり、その他、会社の都合で解雇をすると、会社が一定の助成金が受けられなくなるなど、さまざまな不利益が生じます。
社員は自主退職だと、雇用保険の基本手当を受けられるようになるまで3ヶ月の給付制限がかけられたり、給付日数に減らされたりすることがあります。
しかし、解雇であれば、労働者の責に帰すべき重大な理由による解雇を除き、こうした制限はありません。
退職勧奨は、会社から社員の「退職の申し込み」を引き出す行為のことで、社員が同意すると、退職の申し込みが即時に承諾されたことになります。
そして、詐欺、強迫による場合を除いて、社員が一方的にこれを取消すことはできません。
退職勧奨は解雇とは異なり、あくまで社員自身の自由意思にもとづいて会社を辞めてもらうものですから、会社が社員の自由な意思を妨げるようなことをすれば解雇を迫ることと同じで、退職勧奨とは認められないのです。
判例では、自由な意思を妨げない範囲として、次の評価基準が示されています。
@勧奨の回数、期間は、退職を求める事情の説明や優遇措置などの退職条件の交渉に通常必要な限度にとどめているか。
A被勧奨者の名誉感情を害することのないように配慮しているか。
B勧奨者の数、優遇措置の有無などを総合的に勘案して、全体として被勧奨者の自由な意思決定が妨げられている状況でないか。 |
本件の場合には、会社の退職勧奨は、本来の勧奨の域を超えているものと考えられ、太郎さんは強迫による意思表示という理由で、退職願を取消すことができると考えられます。
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