行方不明の欠勤で懲戒解雇
<事例>
花子さんは1ヶ月前から突然欠勤し、行方不明となっています。
会社は心配して、花子さんが1人暮らしをしているアパートに訪問してみましたが、呼びかけには応じず、大家さんや身元保証人である両親に聞いても誰も行き先を知りませんでした。
同僚に聞いても手掛かりはなく、携帯電話もつながらない状態でした。
会社は花子さんを長期欠勤を理由とした懲戒解雇処分とし、花子さんが1人暮らしをしているアパートに解雇通知書を送りました。
しかし、会社が解雇通知書を送ってから1ヵ月後、花子さんが会社に姿を現し、懲戒解雇処分は無効であると主張しました。 |
会社を自己の都合で退職する場合には、少なくとも1ヶ月前に退職の意思表示をして、引継ぎを済ませてから円満退職するのが常識ですが、突然退職の意思表示を示し会社に来なくなるといった場合もあります。
この場合には、社員寮や居所から自己の意思表示で退出したことが明らかであるなど、行方不明となった社員の状況を総合的に考慮して、その社員が会社に戻る意思がないことが明らかである場合には、本人より黙示による退職の意思表示があったものとして取り扱うこともできます。
しかし、問題となるのは、何の連絡もなく突然行方不明になる場合で、解雇というのは、使用者の一方的な意思表示による労働契約の解除であり、効果の発生は労働者にその意思表示が到達した時点です。
会社が解雇の意思表示をする場合、書面による解雇通知が自宅に届けば、本人が不在であっても配偶者や両親などの家族がいれば、たとえ家族が受け取りを拒否しても、解雇の意思表示は到達したものとして取り扱われます。
本件の場合、花子さんとは連絡がとれず、家族も行き先を知りませんから、花子さんのアパートや両親の元に解雇通知を送っても解雇の意思表示が花子さんに到達しないことは明らかであると考えられます。
そこで、労働者が行方不明である場合には、「公示送達」jという制度を利用することによって解雇の意思表示を有効に行う必要があるのです。
簡易裁判所に申立を行い、裁判所が掲示板に掲示して、掲示した旨を官報や新聞に掲載することが必要なのです。
官報等に掲載された日から2週間を経過した時に初めて、労働者に解雇の意思表示が到達したものとみなされます。
判例では、県職員の甲氏が多額の借金を抱え失踪し、県は2ヵ月後に懲戒免職処分とし、甲の妻に処分通知書を交付し県の公報掲載し、その公報を失踪前の住所に郵送しました。
県は公示送達という方法をとらなかったのですが、最高裁は県の懲戒解雇処分を有効と判断しました。
また、会社が社員を解雇しようとする場合には、30日以上前の予告等か、所轄の労働基準監督署長の除外認定を受ける必要があります。
本件の場合、花子さんを解雇するまでに、官報に掲載を行なってから花子さんに解雇の意思表示が到達したとみなされるまでに2週間、さらに所属の労働基準監督署長の除外認定を受けなかったとして30日間が必要になります。
このような場合に備えて、就業規則に「社員が行方不明となり、1ヶ月以上連絡がとれず、会社に出勤しない場合には、退職扱いとする」とあらかじめ規定しておくことが有効です。
判例では、「事故欠勤が1ヶ月以上で特別な理由が認められないときは、自然退職となる」という定めは、使用者の解雇の意思表示を待つことなく、1ヶ月の事故欠勤満了と同時に自然退職となることを定めたものであるとしています。
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