会社の寮がある条件で入社
<事例>
太郎さんは、採用面接のときに、入社後は当社の独身寮に入れると聞いて、入社を決めました。
会社からかなり遠い場所に住んでいた太郎さんは、当面は同社近くの親戚の家に住居を移し、その後、寮へ入居することとしました。
会社に勤務し始めて2週間後、太郎さんは改めて寮への入居申し込みをしました。
しかし、会社は「退去予定者の転勤がキャンセルとなったため、あと1年は入居できない」と言い始めました。
太郎さんは、明示された労働条件を守らないような会社に将来はないと退職を申し出て、帰郷する費用を請求しました。 |
太郎さんは、帰郷旅費の請求ができませんし、労働契約の即時解約もできないと考えられます。
会社は契約締結に際しては、次の事項について社員に明示しなければなりません。
@労働契約の期間に関する事項
A就業の場所、従事すべき業務に関する事項
B労働時間などに関する事項
始業・就業の時刻、所定時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項です。
C賃金に関する事項
賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締め切りと支払時期のことですが、臨時に支払われる賃金や退職手当を除きます。
D退職に関する事項(解雇の事由を含む)
E退職手当に関する事項
適用労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払方法、支払時期に関する事項です。
F臨時に支払われる賃金、賞与、最低賃金に関する事項
G労働者に負担させるべき食費・作業用品その他に関する事項
H安全、衛生に関する事項
I職業訓練に関する事項
J災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
K表彰、制裁に関する事項
L休職に関する事項 |
こうして明示された労働条件が事実と違う場合には、労働者は即時に労働契約を解約することができ、もし就業のために住居を移しており、契約解除の日から14日以内に帰郷するのであれば、使用者に帰郷旅費を請求することができます。
(労働条件の明示)
労働基準法第15条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
3 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
会社の社員寮は、福利厚生の一つと考えられ、上記の@〜Lのいずれにも該当しないのです。
労働基準法15条で定められた労働者の権利は、あくまで@〜Lの労働条件が事実と異なる場合に限られており、太郎さんは労働契約の即時解約もできないのです。
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