入社直前の内定取消通知
<事例>
太郎さんは、内定が決まり入社を決めようとしていた会社から、3月末になって内定取消の通知を受け取りました。
会社は、毎年4月1日付で新規学卒者を10名ほど採用しており、前年の7月には採用内定者に内定通知書を送っています。
今年も新たに8名を採用する予定で、同じように内定者全員に通知書を送っていたのですが、業績が急速に悪化し、当分回復の見込がなくなってしまったのです。
人件費を抑制する必要もあり、やむを得ず内定者のうち6名に、採用直前の3月20日に内定取消通知書を発送したのです。 |
本件の場合、会社の内定取消は無効となる可能性が高いと考えられます。
採用の内定は、労働契約が成立したことを意味しますが、これは一般の労働契約とは異なり、特別に「解約権留保付始期付雇用契約」といわれます。
ただ、どんな内定でも解約件留保付始期付雇用契約が成立したとはいえず、内定通知に「最終的な採否の決定は追って連絡します」といった記載がない限り、雇用契約は成立したものと考えられます。
この雇用契約が成立すると、使用者は正当な理由なく内定を取消すことはできず、判例では、正当な理由とは「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認することができる」ものとされています。
具体的な例をあげると、次のような場合が考えられます。
@新規学卒者が卒業できなかった場合
A提出書類などに虚偽の記載があったり、虚偽の事実を述べた場合
虚偽の内容が軽微であるときは、内定取消が認められない場合もあります。
B採用後の業務に支障が出るほどの健康異常が発生した場合
Cその他不適格事由があった場合
犯罪を犯した等の場合 |
本件の場合には、これらのいずれにも該当しませんが、場合によっては内定取り消しが認められることもあります。
例えば、予定通り内定者を雇入れると人件費が経営を圧迫して行き詰ることは明らかであり、すでに雇用している社員の解雇を回避するためには、内定取消がやむを得ない状況にあったこと、さらに、内定取消を回避するために最大限の努力をしていたこと、とり得る措置を尽くしたことが認められれば、内定取消も認められる可能性はあります。
本件の場合、採用直前になって取り消しを通知を出しているため、内定取消は無効とされる可能性が高いと考えられます。
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