年次有給休暇取得の目的
<事例>
会社では、社員が年次有給休暇をとる際に、申請用紙に期間と目的を書いて提出することを義務付けています。
これまで冠婚葬祭や病気、怪我といった理由以外で有給休暇をとる社員はいませんでした。
太郎さんは、はじめて旅行を理由に有給休暇を請求したのですが、社長は旅行で有給休暇を取得を認めませんでした。 |
太郎さんの旅行という有給休暇取得の理由は正当であり、社長は太郎さんの有給休暇取得の申請を拒むことはできません。
年次有給休暇は、社員が次の要件を満たすことにより自動的に発生するものとされます。
@雇入れられてから6ヶ月以上継続して勤務している。
A前年1年間(雇入れ後6ヶ月の人はその6ヶ月)の全労働日の8割以上出勤した。 |
この要件を満たして発生した法定の年次有給休暇は、原則として社員が自由に取得できます。
取得できる時季については、原則として社員が自由に選ぶことができますが、会社側は時季変更権をもっています。
しかし、取得の目的については、社員の自由なのです。
例えば、社員がその所属する事業場のストに参加するために有給休暇を請求するようなことは、年次有給休暇制度の趣旨に沿うものではないため、年次有給休暇の成立する余地はないとされた事例があります。
また、特定の業務を拒否する目的で年次有給休暇を取得することも、権利の濫用として認められません。
例えば、タクシー会社で、夜間専用車両の乗務を拒否することを目的とした有給休暇権の行使に関する判例では「本来の年次有給休暇権の行使でないとはいえないが、夜間専用車両を実施する必要性がきわめて高かったこと、ほかの乗務員は夜間専用車両の乗務を嫌悪しながらも、平等に乗務していたことなどからして、夜間専用車両の乗務を拒否することを目的とする年次有給休暇の行使は権利濫用にあたる」とされた事例があります。
会社が時季変更権を行使するかどうかを判断するために、休暇の目的を聞くこと自体はさしつかえありません。
理由を聞かれた社員が嘘の理由を言った場合でも、使用者の時季変更権の行使がこれによって左右されるなどの特段の事情がない限り、誠実義務違反とされるわけではありません。
会社は、社員が同じ時季に有給休暇をとると人手不足で正常に業務できなくなるおそれもあります。
そこで労働基準法39条4項は、社員の時季指定権を認めつつ、一方で会社の時季変更権を認めています。
「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」としているのです。
例えば、前日や当日に社員が有給休暇の取得請求をしたものの、その社員は1人で重要な業務を行なっており、急には代わりの人をあてがうことができず業務に支障が出るような場合には、会社は時季変更権を行使できます。
しかし、恒常的に人手不足なのにあえて人員の補充をしなかったような場合、会社が人手不足を理由として時季変更権を行使することは認められません。
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