求人記載の勤務地から転勤命令
<事例>
会社は運送業を営んでおり、全国に事業所を展開し、就業規則でも全社員に転勤が行なわれ得ることを明記しています。
運転業務の社員は転勤が多いのですが、太郎さんは運転業務社員募集の求人広告に「勤務地は大阪」とあるのをみて応募しました。
しかし、大阪で勤め始めた1年後に広島勤務を命じられることになったのです。
会社は太郎さんに雇入れ時には、特に勤務とを限定する特約をしておらず、太郎さんの主張は求人広告のみを根拠としている、と主張しました。 |
太郎さんは、求人広告の採用条件として「大阪勤務」とされていたので応募したわけですが、判例では、これだけでは勤務地特定の特約があったものとは認めていませんから、太郎さんは転勤命令を拒否できないと考えられます。
一般に労働契約を結ぶ際には、就業の場所や職務の内容など重要や労働条件が明らかにされることになっており、契約を交わした後にすぐにこれらの条件を変更することは契約違反となります。
しかし、長期の雇用を見込んで、期間の定めのない契約を結んでいる場合は、一定の期間が経過して条件がそろえば、特約のない限り、会社は社員の職務内容や勤務地を変更する権限を有すると考えられています。
それは次のような条件とされています。
@就業規則などに、転勤を命じる場合があることを明記していること
A業務上の必要性があること |
しかし、完全に勤務地を限定している労働契約を結んだ場合は、これらの要件を満たしていても、原則として労働者の同意なしには勤務地を変更することはできません。
そして、勤務地を限定する特約は、必ずしも契約書に明記されていなければならないというものではなく、労働契約を結んだ当時の具体的な事情を総合的に勘案して、判断が下されることになります。
例えば、全国に事業所をもつ企業に、総合職として入社した社員などの場合は、勤務地が特定されていたとは認め難いとされます。
逆に、補助職として現地採用された社員は、ほぼ勤務地を限定したものと認められる傾向にあります。
判例では「勤務場所は従業員にとって労働契約の要素をなすものであるから、特定勤務場所に勤務する従業員たる地位の保全を求めて転勤命令の効力を争うことは適法」としています。
しかし、実際には、総合的に判断して「会社の業務上の都合により転勤を命ずる旨の就業規則の規定があり、雇用契約において勤務地限定の合意がなく、単身赴任が従業員の家庭事情による選択の結果であり、勤務及び私的生活面に会社が相当の配慮をしている場合の転勤命令には、合理性がある」とされることもあります。
太郎さんの場合も、求人広告の採用条件として「大阪勤務」とされていただけでは、勤務地特定の特約があったものと認め難いのです。
原則として社員は特別な事情がない限り、転勤命令を拒否することはできないのです。
特別な事情とは、例えば、高齢や病気の親を介護せねばならず、かつ赴任先へ連れて行くこともできない場合など、かなり限定されています。
会社も無条件で転勤命令できるのではなく、次のような場合にはその転勤命令は無効となります。
@業務上の必要性もなく転勤を命じる場合
Aほかの不当な目的で転勤を命じる場合
Bその転勤命令が、社員に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせることになる場合 |
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