業務命令外の残業
<事例>
開発部には部長以下社員が6名在籍しており、これまではほぼ所定の勤務時間内で仕事を終えていました。
最近、新ソフトの開発がいきづまり、残業する部員が出てきたのですが、部長はそれを認識していたものの、あえて所定時間外労働を命じたり、指示などはしませんでした。
部員の太郎さんが会社に残業代の支払を命じたところ、部長の命令もなく勝手に行なった残業である、という理由で、会社はこれを拒否しました。 |
太郎さんに残業代が支払われる可能性が高いと考えられます。
使用者による業務の明示的な指示がない労働時間でも、黙示的な指示があると認められる場合には、正規の労働時間として取り扱われることになるます。
原則として、会社は業務命令に基づかない業務は労働時間として取り扱う必要はありません。
本件の場合でも、部長は残業を行なわせる意図はありませんし、かつ必要性もないと考えていましたから、太郎さんの残業は勝手に行なったものであり、労働時間として認められないことになります。
しかし、太郎さんが行っていた残業は、直接業務に関連するものであり、開発が行き詰っているという特殊な事情がありますから、客観的な必要性があったと認められれば、会社はこれを労働時間として扱わなければなりません。
また、部長は太郎さんが残業を行なっていることを認識していましたし、一般的に部長には部員の労働時間を管理する責任があるものと考えられ、部長が残業の必要性についてどのように認識していたかにかかわらず、太郎さんの残業を追認したものと考えられるのです。
ただし、命令なしの時間外業務が、どんな場合でも賃金支払の対象になるとは限りません。
住み込みの従業員が早出・残業をしたことについての判例では、就業時間の前または後にした労働であっても、その日または翌日の就業時間中にすれば足りるものは、自発行為であって、早出・残業にはならないとしました。
命令なしの時間外労働については、個々の事情に即して判断する必要があるのです。
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