ストライキ不参加の賃金請求の判例
<判例>
XらはY会社の大阪と沖縄の営業所に所属する従業員であり、訴外A労働組合の組合員である。
Aは東京地区の組合員のみでストライキを実施し、羽田空港内のYの業務用機材を格納家屋で占拠したため、羽田空港における地上業務が困難となり、予定便数や路線の変更をせざるを得なくなった。
その結果、大阪と沖縄での運行が一時中止となり、Xらの就労が不要になったとして、YはXに対して、その間の休業を命じ、賃金を支払わなかった。
そこで、Xらはストライキによる休業がYの責任で労働できなかったとして賃金の支払を請求し、これが認められない場合にも、労基法26条「使用者の責に帰すべき事由」に当るとして休業手当の支払を求めた。
「企業ないし事業場の労働者の一部によるストライキが原因で、ストライキに参加しなかった労働者が労働をすることが社会観念上不能または無価値となり、その労働義務が履行することができなくなった場合、不参加労働者が賃金請求権を有するか否かについては、当該労働者が就労の意思を有する以上、その個別の労働契約上の危険負担の問題として考察すべきである。
このことは、当該労働者がストライキを行なった組合に所属していて、組合意思の形成に関与し、ストライキを容認しているとしても、異なるところはない。
ストライキは労働者に保障された争議権の行使であって、使用者がこれに介入して制御することはできず、また、団体交渉において組合側にいかなる回答を与え、その程度譲歩するかは使用者の自由であるから、団体交渉の決裂の結果ストライキに突入しても、そのことは、一般に使用者に帰責さるべきものということはできない。
したがって、労働者の一部によるストライキが原因でストライキ不参加労働者の労働義務の履行が不能となった場合は、使用者が不当労働行為の意思その他不当な目的をもってことさらストライキを行なわしめたなどの特別の事情がない限り、右ストライキは民法536条2項の「債権者の責に帰するへき事由」には当たらず、当該不参加労働者は賃金請求権を失うと解するのが相当である」。
「本件において、Yが不当労働行為の意思その他不当な目的をもってことさら本件ストライキを行なわしめたなどの前記特別の事情がないことは明らかである。
そして、前記休業を命じた期間中飛行便がほとんど大阪及び沖縄を経由しなくなったため、Yは管理職でないXらの就労を必要としなくなったというのであるから、その間Xらが労働をすることは社会観念上無価値となったといわなければならない。
そうすると、それを理由にYが右の期間Xらに対し休業を命じたため、Xらが就労することができず、その労働義務の履行が不能となったのは、Yの「責に帰すへき事由」によるものということはできず、Xらは右期間中の賃金請求権を有しないこととなる」。
(ノースウエスト航空事件 最二小判昭和62・7・17 民集41巻5号)
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