労災保険の業務上疾病の判例
<判例>
Xは、昭和48年10月から、自動車運転者の派遣を業とする会社に雇用されA会社横浜支店に派遣されており、支店長付運転手として自動車運転業務に従事していた。
昭和56年7月以降、Xの勤務時間は早朝から深夜に及ぶようになり、特に、同58年12月以降は時間外労働時間が増加、その中には深夜労働時間も含まれており、走行距離も長いものとなった。
Xは、昭和59年5月11日早朝、クモ膜下出血を発症し、休業したため、Y(横浜南労基署長)に対して労災保険法上の休業補償給付を請求したが、Yは上記疾病が業務上の疾病に当らないとして不支給決定をした。
Xはこの不支給決定の取消を求めて訴えを提起した。
第一審はXの請求を認容したものの、控訴審では原判決が取消され、請求が棄却されたため、Xが上告した。
Xの業務は精神的緊張を伴うものである上、不規則で拘束時間も長く、労働密度も高いものであった。
Xは遅くとも昭和58年1月以降本件クモ膜下出血の発症に至るまでこうした業務に従事しており、特に発症の約半年前の同年12月以降の勤務はXにかなりの精神的・身体的負荷を与え慢性的な疲労をもたらした。
発症前日から当日にかけての業務も、「それまでの長期間にわたる右のような過重な業務の継続と相まって、Xにかなりの精神的、身体的負荷を与えた」。
Xが基礎疾患を有していた蓋然性が高い等の事情を考慮しても、「Xの基礎疾患の内容、程度、Xが本件クモ膜下出血発症前に従事していた業務の内容、態様、遂行状況等に加えて・・・慢性の疲労や過度のストレスの持続が慢性の高血圧症、動脈硬化の原因となり得るものであることを併せ考えれば、Xの右基礎疾患が右発症当時その自然の経過によって一過性の血圧上昇があれば直ちに破裂をきたす程度にまで憎悪していたとみることは困難」であり、「他に確たる憎悪要因を見出せない本件においては・・・業務による過重な精神的、身体的負荷がXの右基礎疾患をその自然の経過を超えて憎悪させ、右発症に至ったものとみるのが相当」であり、「その間に相当因果関係の存在を肯定」できる。
Xのクモ膜下出血発症は業務上疾病に該当する。
(横浜南労基署長(東京海上横浜支店)事件 最一小判平成12・7・17 労判785)
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