うつ病で労災保険請求の判例
<判例>
Aは、輸送用機械器具製造等を業とするB会社に勤務していたが、昭和63年7月下旬ないし8月上旬頃うつ病に罹患し、同年同月25日に自殺した。
Aの妻であるXが労災保険法に基づく遺族補償年金等の給付を請求したところ、Y(豊田労働基準監督署長)が不支給処分をしたため、Xは同処分の取消を求めて訴えを提起した。
原審はXの請求を認容し、Yが控訴した。
「業務と精神疾患の発症や憎悪との間に相当因果関係が肯定されるためには、・・・当該業務自体が、社会通念上、当該精神疾患を発症もしくは憎悪させる一定程度以上の危険性を内在または随伴していることが必要である」。
うつ病の発症・憎悪について「相当因果関係の存否を判断する」際には、「うつ病に関する医学的知見を踏まえて、発症前の業務内容及び生活状況並びにこれらが労働者に与える心身的負荷の有無や程度、さらには当該労働者の基礎疾患等の身体的要因や、うつ病に親和的な性格等の個体側の要因等を具体的かつ総合的に検討し、社会通念に照らして判断するのが相当である」。
「自殺行為のように外形的に労働者の意思的行為と見られる行為によって事故が発生した場合で」も、「その行為が業務に起因して発生したうつ病の症状として発現したと認められる場合には、労働者の自由な意思に基づく行為とはいえず」、法12条の2の2第1項にいう故意には該当しない。
そして、判断指針(平成11・9・14基発544号)は「業務による心理的負荷により精神障害が発病したと認められる者が自殺を図った場合には、精神障害によって正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、または自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたものと推定し、原則として業務起因性を認め」ているが、この考え方は妥当である。
Aの疲労の蓄積等の様々な事情を総合考慮すれば、「本件うつ病の発症とそれに基づく本件自殺には業務起因性が認められ・・・これを否定した本件処分は違法」である。
(豊田労基署長(トヨタ自動車)事件 名古屋高判平成15・7・8 労判856)
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