使用者の指揮命令下の判例
<判例>
Xらが従業員として働くY会社N造船所は、所定労働時間を1日8時間(休憩時間1時間)とする就業規則の変更をした際、始業・終業基準は、始業に間に合うように更衣等を完了して作業場に到着し、所定の始業時刻に実作業を開始し、午前の終業においては所定の終業時刻に実作業を中止し、午後の始業に当っては作業に間に合うように作業場に到着し、午後の終業にあたっては所定の終業時刻に実作業を終了し、終業後に更衣等を行うこととした。
その当時Xらは、実作業に当り、作業服、保護具や工具等の装着を義務付けられ、これを怠れば懲戒処分等を受け、成績査定に反映されて賃金の減収につながることがあった。
そうした中で、Xらは、就業規則の定めにより所定労働時間外に行うことを余儀なくされた@入退場門から更衣所までの移動時間、A作業服・保護具等を装着して準備体操場までの移動時間、B午前・午後の始業時刻前に副資材等の受け出し・始業時刻前の散水に要する時間、C午前の終業時刻後に作業場から食堂等まで移動し、現場控除等において作業服等を再装着する時間、E午後の終業時刻後に作業場等から更衣所等まで移動してそこで作業服等を脱離する時間、F手洗い、洗面、洗身、入浴後に通勤服を着用する時間、G更衣所等から入退場門まで移動する時間のいずれも、労基法上の労働時間に該当するとして、8時間を越える時間外労働に該当する@からGまでの更衣につき割増賃金等をYに対して請求した。
労働基準法上の労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。
そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、またはこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当すると解される」。
「Xらは、Yから、実作業に当り、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、また、右装着を事業所内の所定の更衣所等おいて行うものとされていたというのであるから、右装着及び更衣所から準備体操場までの移動は、Yの指揮命令下に置かれたものと評価することができる。
また、Xらの副資材等の受け出しは及び散水も同様である。
さらに、Xらは、実作業の終了後も更衣所と等において作業服及び保護具等の脱離等を終えるまでは、いまだYの指揮命令下に置かれているものと評価することができる」。
(三菱重工業長崎造船所事件 最一小判平成12・3・9 民集54巻3号)
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