仮眠時間の就業手当の判例
<判例>
Xらは、ビル管理会社Yの従業員でYが管理を受託した各ビルに配属され、ビル設備の運転操作、監視、ビル内巡回監視等の業務に従事していた。
Xらは、毎月数回24時間の勤務に従事し、同勤務中に休憩が合計2時間、仮眠時間が連続8時間が与えられていたが、本件仮眠時間中は、ビルの仮眠室に待機し、警報がなるなどすれば直ちに所定の作業を行うが、そのような事態が生じない限りは睡眠をとってよいことになっていた。
こうした24時間勤務に対してYは、泊まり勤務手当(1回につき2300円)を支給し、現実にXらが突発的作業等に従事した場合は、その時間に対して時間外手当及び深夜手当を支給したが、本件仮眠時間を労働時間として扱わなかった。
そこで、XらはYに対し、本件仮眠時間は現実に作業を行ったか否かにかかわらず全て労働時間であり、仮眠時間に対しては時間外勤務手当を、深夜の時間帯に対しては深夜就業手当を支払うべきであると主張して、すでに支払われた泊まり勤務手当等との差額の支払を請求した。
労基法上の労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない仮眠時間(以下「不活動仮眠時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである」。
「そして、不活動仮眠時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。
したがって、不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当るというべきである。
そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である」。
「Xらは、本件仮眠時間中、労働契約のに基づく義務として、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられているのであり、実作業への従事がその必要が生じた場合に限られるとしても、その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないから、本件仮眠時間は全体として労働からの解放が保障されているとはいえず、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができる。
したがって、Xらは、本件仮眠時間中は不活動仮眠時間も含めてYの指揮命令下に置かれているものであり、本件仮眠時間は労基法上の労働時間に当るというべきである」。
(大星ビル事件 最一小判平成14・2・28 民集56巻2号)
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