退職金減額の判例

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退職金減額の判例

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退職金減額の判例

<判例>

事実

XらはY銀行の退職者およびその相続人である。

Yの退職金規程によれば、Yは退職者に対して退職一時金を支給するほか、勤続満20年以上の退職者が満60歳に達した場合、その翌月から終身にわたり退職年金を毎月支給することになっていた(退職者が死亡したときは、配偶者に半額支給)。

退職年金の額は退職金規定により定められていたが、実際には規定額の3倍程度を支給する慣行が20年以上続いていた。

退職年金の支給を開始する際、Yが交付する「年金通知書」には「年金は経済情勢及び社会保障制度などに著しい変動、または銀行の都合により之を改訂することがあります」と記載されていた。

バブル崩壊後の経営環境の悪化で、Yの収益は急速に悪化し、一方で、退職年金の支給が経営環境を圧迫することが確実視された。

平成8年1月、Yは退職年金の支給額を規定額に減額することを決定し、年金受給者計578名に対し、退職年金の支給額を規定額に戻す旨通知した。

これに対し、大多数が異議をとどめることなく確認書を返送したが、Xらは明確に拒絶の意思表示をした。

Yは、支店長・支店次長等及び労働者代表の行員に対し、規定額を超える部分の年金は支給しない旨説明し、同年4月分から規定額のみの支給を実施した。

Xらは、@実際に支給されている額を退職年金の支給額とする不文の退職年金規定が存在する、A入行時及び退職時に、Xら主張の額を退職年金として支給することを約している、BXら退職者とYの間で成立した労使慣行を一方的に不利益変更することはできないと主張し、本件主張を提起した。

判旨

「Yの退職年金は、就業規則としての性質を有する退職金規定に明文で定められ、一定の基準に従って全従業員について一律に支給されるものであるから、労働契約上Yに支払義務のある退職金の一部であることが認められ」、恩恵的な福祉年金として任意に支払われるものではない。

「このように、Yの退職年金・・・は、退職金規定に根拠を有し、労働契約上その支払が義務付けられるものではあるが、Yにおいては、退職年金と併せて退職一時金も支給され、その額は、他の同業、同規模の会社と比較して特に低額ではなかったこと・・・、退職年金の支給期間が終身とされているうえに、年金受給中に死亡した退職者の配偶者にもその半額が支給されるものとされていること等を勘案すれば、Yの退職年金は、賃金の後払い的性格は希薄であって、主として功労報償的性格の強いものであるというべきである」。

「XらとYとの間では、Xら主張の額を退職年金として支給する旨の合意ないしは労使慣行が存在したと認められるものの、右合意ないし労使慣行においては、退職年金支給開始後に、Yにおいてその額を減額することができることが当然の前提とされており、Yの本件減額措置も右Yに留保された権限を行使してなされたものであるところ、その権限の行使には一定の合理性ないし必要性が認められるのであるから、本件減額措置は有効である」。

(幸福銀行事件 大阪地判平成10・4・13 労判744)

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