福祉年金の改廃の判例
<判例>
Yは、電気、通信、電子及び照明機械器具の製造、販売等を業とする株式会社である。
昭和41年から、社員として永年勤務し退職した者の退職後の生活の安定を図る目的で、会社の退職者を対象とした福祉年金制度が創設された。
Xらは、この年金制度に加入した者である。
その内容は、退職金の一部を年金原資としてYに預け入れ、一定の利率による利息を付け退職者に支給する「基本年金」と、基本年金の受給が完了した後、受給者が死亡するまでの間、同年金の支給額と同額を支給される「終身年金」からなっており、「将来、経済情勢もしくは社会保障制度に大幅な変動があった場合・・・全般的な改定または廃止を行う」旨の規定があった。
年金運営によって生じる赤字分(利息及び終身年金)は、Yの事業収益から賄われた。
Yは、平成14年に現役従業員との関係では廃止するとともに、既受給者についても、給付利率を一律2%引き下げた。
Xらは、同意なしになされた一方的な利率改定が許されないとして、減額前の年金額と既払い額の差額の支払を求めた。
地裁は、Xらの請求を棄却したため、Xらが控訴した。
改廃規定によって既受給者との間においても、給付利率の改定をすることは許される。
「もっとも、・・・Yは、本件改廃規定が規定する要件が認められれば、自由に本件規程を改定できるわけではなく、本件利率改定内容の必要性、相当性を必要とすることは、事柄の性質上明らかである。
また、本件利率改定に当り、本件制度は退職労働者の福祉政策の一環として労働組合との協議のうえ発足したものであるから労働組合に対し理解を求めることが必要であるし、また、本件年金受給者は退職して労働組合員ではないから、不利益を受ける本件年金受給者に対しても、本件利率改定に対し理解を求める努力をする等手続の相当性が必要である」。
Yは、これらの要件を満たしており、「本件改廃規定に基づく、本件利率改定は、有効であり、その効力が生じたことが明らかである」。
(松下電器産業事件 大阪高判平成18・11・28 労判930)
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