女子の賃金差別の判例
<判例>
Xら(3名、女性)は、酒類食品等の卸しを業とするY会社に勤務している従業員である。
Yは、給与規定で本人給を、@最低生計費の保障を目的に、原則として社員の年齢に応じ別表に定める額を支給する、A適用年齢は実年齢25歳(のちに26歳に引き上げ)まではみなし年齢とし、それ以降は実年齢をもって支給する、B適用年齢は毎年4月1日をもって定める、という基準で支給することを定め、C非世帯主および独身の世帯主には所定の本人給を支給しないことがある、という例外規定を定めた。
さらに、平成元年には、労働基準監督署からの指導もあり、Cの例外規定を「非世帯主及び独身の世帯主で、かつ本人の意思で勤務地域を限定して勤務についているものには、所定の本人給の適用はみなし年齢26歳までとする。
この勤務地域の限定・無限定は本人の希望によって変更できるが1回限りとする」と変更した。
かかる給与規定によって、Xらには、25歳または26歳相当で据え置かれた本人給及び一時金が支給されてきた。
そこでXらは、Yは男性従業員に対してはそれぞれの実年齢に対応した給与表に基づく本人給及び一時金を支払っているのに、Xらに対しては実年齢より低い本人給及び一時金で据え置いてきたことは、女性であることを理由とした差別扱いであるとして、差額賃金・慰謝料の支払、労働契約上の地位確認、を求めた。
「Yにおいては、一貫して、世帯主か否かの基準を住民票上の世帯主に該当するかどうかで決定していることが認められる。
女子が世帯主になれないという理由はないし、また、本件全証拠によっても、Yが従業員に対して世帯主を男子にするよう指導をしたという事実も認められない」。
「しかしながら・・・Yは、世帯主・非世帯主の基準を設けながら、実際には、男子従業員については、・・・一貫して実年齢に応じた本人給を支給してきている」。
「しかも、少なくとも、現在における社会的現実は、結婚した男女が世帯を構成する場合、一般的に男子が住民票上の世帯主になるというのが公知の事実であり、・・・Yとしても、同基準を制定した際、あらかじめ全従業員の住民票を集約したことにより、当時女子従業員のほとんど全員が非世帯主または独身の世帯主であること、・・・を認識していた」。
「Yは、・・・女子であることを理由に賃金を差別したものというべきである」。
よって、「世帯主・非世帯主の基準は、労働基準法4条の男女同一賃金の原則に反し、無効であるというべきである」。
「Yは、中央労働基準監督署から世帯主・非世帯主の基準の運用について男女同一賃金の原則に違反する疑いがないように措置すべき旨の指導を受け、その検討を迫られていたため、・・・勤務地域限定・無限定の基準の適用の結果生じる効果が女子従業員に一方的に著しい不利益となることを容認し、右基準を新たに制定したものと推認される」。
Yは「女子従業員に対し、女子であることを理由に賃金を差別したものであるというべきである」。
(三陽物産事件 東京地判平成6・6・16 労判651)
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