セクシャル・ハラスメントの判例
<判例>
X(女性)は、雑誌の出版などを行うY2会社において、アルバイトとして採用された後、昭和61年1月より正社員となり、Y1編集長(男性)のもとで取材・原稿執筆・編集等の業務に従事していた。
Y1は、昭和61年11月に入院することになったが、その間に、業務の重要部分に関われない疎外感を持つようになっていた。
Y1は、社内外の関係者らに対して、Xの異性関係は派手であり、不倫関係をもった経験者がいるといった発言を繰り返した。
また、昭和62年12月には、Y1がXに転職を勧めたことで、両者の関係は悪化した。
Y2の専務らは、かかる状況をあくまでXとY1との個人間の対立としてとらえた。
そこで、Xを呼び、Y1と妥協する余地がないか申入れをしてみたが、Xがこれに応じなかったため、話し合いがつかないことになれば退職してもらう旨を述べたところ、XはY2を退職した。
Y1に対しては、3日間の自宅謹慎と、その後に賞与を減棒する処分を行った。
そこでXが、Y1の行為はセクシャル・ハラスメントに該当する不法行為であり、Y2は当該行為が業務の執行につき行われたものであるから使用者責任を負うとして、損害賠償及び慰謝料を請求した。
「Y1が、Y2の職場または・・・関連する場において、・・・Xの個人的な性生活や性向を窺わせる事項について発言を行い、その結果、Xを職場に居づらくさせる状況を作り出し・・・た場合には、それは、Xの人格を損なってその感情を害し、Xにとって働きやすい職場環境のなかで働く利益を害するものであるから、Y1はXに対して民法709条の不法行為責任を負う」。
「Y1のXに対する一連の行為はXの職場の上司としての立場からの職務の一環またはこれに関連するものとしてされたもので、その対象者も、X本人のほかは、Y1の上司、部下に該たる社員やアルバイト学生またはY2の取引先の社員であるから・・・Y2の「事業の執行に付き」行われたものと認められ、Y2はY1の使用者として不法行為責任を負うことを免れない」。
「専務ら行為についても、職場環境を調整するよう配慮する義務を怠り、・・・主として女性であるXの譲歩、犠牲において職場関係を調整しようとした点において不法行為性が認められるから、Y2は、・・・使用者責任を負う」。
Xは、Y1と職場内で対立し、結局Y2を退職するに至ったこと、「働く女性にとって異性関係や性的関係をめぐる私生活上の性向についての噂や悪評を流布されることは、その職場において異端視され、精神的負担となり、心情の不安定ひいては勤労意欲の低下をもたらし、果ては職を失うに至るという結果を招来させるもの」で、その違法性の程度は軽視しうるものではない。
他方、Xの言動が両者の対立を激化させる一端となったことも認められ、Xの異性関係について一部はX自ら他人に話したことも認められることから、Xの精神的損害に対する慰謝料の額は、150万円をもって相当と認める。
(福岡セクシャル・ハラスメント事件 福岡地判平成4・4・16 労判607)
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