臨時社員の賃金格差の判例
<判例>
Xらは2ヶ月の雇用期間を更新して、4年ないし25年という長期にわたりY会社の製造部門でライン作業に従事する女性労働者であり、所定労働時間は15分短いものの、実際には女性正社員と勤務時間・日数は同じで、仕事内容も差はなく、QC活動などにも参加していた。
Xらは日給制であり、その額は年功給的な月給性のもとにある正社員と比べて著しく低かった。
Xらは、こうした賃金格差が違法であるとして、不法行為に基づく賃金を請求した。
「同一価値労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念は、賃金格差の違法性判断において、ひとつの重要な判断要素として考慮されるべきものであって、その理念に反する賃金格差は、使用者に許された裁量の範囲を逸脱したものとして、公序良俗違反の違法を招来する場合があると言うべきである」。
本件の賃金格差についてみると、使用者たるYは、「Xらを臨時社員として採用したままこれを固定化し、2ヵ月ごとの雇用期間の更新を形式的に繰り返すことにより、女性性社員との顕著な賃金格差を維持拡大しつつ長期間の雇用を継続したことは、前述した同一価値労働同一賃金の原則の根底にある均等待遇の理念に違反する格差であり、単に妥当性を欠くというにとどまらず公序良俗違反として違法となるものと言うべきである・・・」。
「もっとも、均等待遇の理念も抽象的なものであって、均等に扱うための前提となる諸要素の判断に幅がある以上は、その幅の範囲内における待遇の差に使用者側の裁量も認めざるを得ないところである。
したがって、本件においても、Xら臨時社員と女性正社員の賃金格差が全て違法となるというものではない。
前提要素として最も重要な労働内容が同一であること、一定期間以上勤務した臨時社員については年功という要素も正社員と同様に考慮すべきであること、その他本件に現れた一切の事情に加え、Yにおいて同一価値労働同一賃金の原則が公序でないということのほか賃金格差を正当化する事情を何ら主張立証していないことも考慮すれば、Xらの賃金が、同じ勤務年数の女性正社員の8割以下となるときは、許容される賃金格差の範囲を明らかに超え、その限度においてYの裁量が公序良俗違反として違法となると判断すべきである」。
(丸子警報器事件 長野地上田支判平成8・3・15 労判690)
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