退職後の競業避止の判例
<判例>
X会社は、各種冶金用副資材の製造販売を業としている。
Y1とY2の2名は共に昭和33年にXに入社し、Y1は入社時より約10年間にわたりXの本社研究部に所属し、退社時には現場の製品管理を担当し、Y2は入社時より同40年まで本社研究部に所属し、以後退社するまで大阪支社鋳造本部で販売業務に従事していた。
Yらは、Xに在職中、Xとの間に秘密漏洩禁止、退社後の競業避止に関する特約を結んだ。
Yらは、Xを昭和44年6月に退社後、同年8月29日に訴外A会社が設立されると同時にAの取締役に就任した。
Aの製品はすべてXの製品と対応し、現実にXの得意先に対しXと同様の営業品目を製造販売しており、XとAは競業関係となった。
そこでXが、当該特約に基づく競業行為禁止仮処分を求めたのが本件である。
「一般に雇用関係において、その就職に際して、或いは在職中において、・・・退職後における競業避止義務をも含むような特約が結ばれることはしばしば行われることであるが、退職後の競業禁止の特約は経済的弱者である被用者から生計の道を奪い、その生存をおびやかすおそれがあると同時に被用者の職業選択の自由に対する干渉とみなされる」。
「しかしながら、当該使用者のみが有する特殊な知識は・・・営業上の秘密として営業の自由とならんで共に保護されるべき法益というべく、そのため一定の範囲において被用者の競業を禁ずる特約を結ぶことは十分合理性があると言うべきである。
技術の中枢部にタッチする職員に秘密保持義務を負わせ、また右秘密保持義務を実質的に担保するために退職後における一定期間、競業避止義務を負わせることは適法・有効と解する」。
競業の制限が合理的範囲を超える場合には、公序良俗に反し無効となるが、「合理的範囲を確定するにあたっては、制限の期間(企業秘密の保護)、Yの不利益(転職、再就職の不自由)及び社会的利害(独占集中のおそれ、それに伴う一般消費者の利害)の3つの視点に立って慎重の検討していくことを要する」。
本件では、競業の制限は合理的な範囲を超えているとは言い難く、無効ということはできない。
よって、Yらは競業する業務に従事してはならない。
(フォセコ・ジャパン・リミティッド事件 奈良地判昭和45・10・23 判時624)
転職サイトを使いこなす!
スポンサードリンク
|
|