低い人事考課で解雇の判例
<判例>
Xは大学院博士前記課程を修了後に平成2年にY会社に雇用され、人事部、企画政策部、開発業務部などを歴任していた。
その過程で仕事についての評価は十分でなく、全従業員を対象として年に3回実施される人事考課において、Xの考課は0から10の11段階評価で
2から4のランクに位置していた。
なお、3以下の評価は、全体の4%程度であった。
Xは平成10年からは品質保証部に勤務するようになり、上司から「社内で仕事を探せ」と言われ、退職勧告をされた。
さらに、同年12月には、特定の担当業務がない「パソナルーム」勤務を命じられて退職を勧告され、平成11年2月に就業規則の規定「労働能率が劣り、向上の見込がないと認めたとき」に該当するとして解雇通知を受けた。
Xは、パソナルームへの配属及び本件解雇は無効であるとして地位保全等仮処分を申請した。
「就業規則・・・に規定する解雇事由をみると、「精神または身体の障害により業務に堪えないとき」、「会社の経営上やむを得ない事由があるとき」など極めて限定的な場合に限られており、そのことからすれば、・・・(上記規定)に該当するといえるためには、平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込がないときでなければならないとというべきである」。
Xは、「平均的な水準に達しているとはいえないし、Yの従業員の中で下位10%未満の考課順位ではある。
しかし、すでに述べたように右人事考課は、相対評価であって、絶対評価ではないことからすると、そのことから直ちに労働能率が著しく劣り、向上の見込みがないとまでいうことはできない。
Yは、Xに退職を勧告したのと同時期に、やはり考課順位の低かった者の中からXを除き55名に対し退職勧告をし、55名はこれに応じている。
このように相対評価を前提として、一定割合の従業員に対する退職勧告を毎年繰り返すとすれば、Yの従業員の水準が全体として向上しても、Yは、毎年一定割合の従業員を解雇することが可能となる。
しかし、就業規則・・・にいう・・・のは、右のような相対評価を前提とするものと解するのは相当ではない。
すでに述べたように、他の解雇事由との比較においても、右解雇事由は、極めて限定的に解されなければならないのであって、常に相対的に考課順位の低い者の解雇を許容するものと解することはできないからである」。
(セガ・エンタープライゼス事件 東京地決平成11・10・15 労判770)
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