会社分割による承継の判例
<判例>
Yは、米国法人Aの完全子会社であり、Xらは、YのHDD(ハードディスクドライブ)事業部門に従事し、訴外B組合に所属している。
AはC会社との間で、HDDに関する業務を総合して遂行するため、平成14年6月頃、従業員を両会社から集めてD会社(本社アメリカ)を設立すること、3年後にはこれをCの100%子会社とすること、処遇や福利厚生などの労働条件も基本的に現在と同等の内容にする旨合意した。
その上で、Yが平成17年に改正前商法上の会社分割を行ったところ、Xらは設立する会社へ承継される営業に含まれる者として、分割計画書に記載された。
そこでXらはYに対し、労働者は、会社分割に伴い自己の労働契約について承継拒否権を有すると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、及び会社分割手続の違法等が不法行為にあたるとして損害賠償を請求した。
「労働契約承継法7条の規定は、その文言から明らかなとおり、分割会社に対し、・・・分割労働者の全労働者を対象として、その理解と協力が得られるような努力する義務を課したものであり、したがって、仮に7条措置が十分に行われなかったとしても、そのことから、当然に会社分割の効力に影響を及ぼすものということはできず、仮に影響を及ぼすことがあったとしても、せいぜい5条協議が不十分であることを事実上推定させるに止まるというべきである」。
「会社分割による労働契約の承継に異議のある労働者は、分割会社が、5条協議を全く行わなかった場合若しくは実質的にこれと同視し得る場合、または、5条協議の態様、内容がこれを義務付けた上記規定の趣旨を没却するものであり、そのため、当該労働者が会社分割により通常生じると想定される事態がもたらす可能性のある不利益を超える著しい不利益を被ることとなる場合に限って、当該労働者に係る労働契約を承継対象として分割計画書に記載する要件が欠けていることを主張して、分割会社との関係で、労働契約の承継の効果を争うことができるものと解するのが相当である」。
(日本アイ・ビーエム事件 東京高判平成20・6・26 労判963)
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