就業規則で賃金減額変更の判例
<判例>
60歳定年制を採用していたY銀行において、行員の高齢化、経営の低迷等の事情から、従業員の73%を組織する労働組合の同意を得て、昭和61年に「専任職」という職階を導入し、55歳に達した管理職は原則として専任職階に移り、基本給を55歳到達直前の額で凍結することとした。
さらに昭和63年には、専任職手当を廃止して、賞与や業績給の大幅減額をもたらす旨の就業規則の提案を行い、これを実施した。
それらの結果、Xらの賃金は、33%ないし56%の削減となった。
このため、Xらが、右措置に関連する就業規則規定の変更が適用されないことを前提とする、未払賃金等を請求した。
一審では請求が認容されたが、原審では棄却されたので、Xらが上告した。
「本件就業規則等変更は、多数の行員について労働条件の改善を図る一方で、一部の行員について賃金を削減するものであって、従来は右肩上がりのものであった行員の賃金の経年的推移の曲線を変更しようとするものである。
もとより、このような変更も、前述した経営上の必要性に照らし、企業ないし従業員の全体の立場から巨視的、長期的にみれば、企業体質を強化改善するものとして、その相当性を肯定することができる場合があるものと考えられる。
しかしながら、本件における賃金体系の変更は、短期的にみれば、特定の層の行員にのみ賃金コスト抑制の負担を負わせているものといわざるを得ず、その負担の程度も前示のように大幅な不利益を生じさせるものであり、それらの者は中堅層の労働条件の改善などといった利益を受けないまま退職の時期を迎えることとなるのである。
就業規則の変更によってこのような制度の改正を行う場合には、一方的に不利益を受ける労働者について不利益性を緩和するなどの経過措置を設けることによる適切な救済を併せ図るべきであり、それがないままに右労働者に大きな不利益のみを受忍させることには、相当性がないものというほかはない」。
「本件では、行員の約73%を組織する労組が本件第一次変更及び本件第二次変更に同意している。
しかし、Xらの被る前示の不利益性の程度や内容を勘案すると、賃金面における変更の合理性を判断する際に労組の同意を大きな考慮要素と評価することは相当ではないというべきである」。
(みちのく銀行事件 最一小判平成12・9・7 民集54巻7号)
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