就業規則で定年延長の判例
<判例>
Y銀行の改正前就業規則では、定年は55歳とされていたが、「但し、願い出により引き続き在職を必要と認めた者については3年間を限度として」在職が認められており、男性の93%が55歳以降も在職していた。
ところが、Yは、行政の強い要請があったことから、60歳定年制を導入することとし、行員の約90%で組織する組合との団体交渉を経て労働協約を締結した上で、就業規則を変更して平成5年から60歳定年制を導入し、同時に、55歳以降の給与・賞与等を大幅に減額した。
Xは、平成6年に当時55歳になったが、この改正により、年間賃金が54歳当時の63〜67%に減額となった。
ただ、定年の延長の結果、退職金等が約24万円余り増額となった。
Xは、一方的な就業規則の不利益変更であるとして、変更前の賃金との差額を請求した。
「本件就業規則の変更は、行員の約90%で組織されている組合(記録によれば、第一審判決の認定するとおり、50歳以上の行員についても、その約6割が組合員であったことがうかがわれる。)との交渉、合意を経て労働協約を締結した上で行なわれたものであるから、変更後の就業規則の内容は労使間の利益調整がされた結果としての合理的なものであると一応推測することができ、また、その内容が統一的かつ画一的に処理すべき労働条件に係るものであることを考え合わせると、Yにおいて就業規則による一体的な変更を図ることの必要性及び相当性を肯定することができる。
Xは、当時部長補佐であり、労働協約の定めにより組合への加入資格は認められておらず、組合を通じてその意思を反映させることのできない状況にあった旨主張するが、本件就業規則の変更が、変更の時点における非組合員である役職者のみに著しい不利益を及ぼすような労働条件を定めたものであるとは認められず、右主張事実のみをもって、非組合員にとっては、労使間の利益調整がされた内容のものであるという推測が成り立たず、その内容を不合理とみるべき事情があるということはできない」。
「以上によれば、本件就業規則の変更は、それによる実質的な不利益が大きく、55歳まで1年半に迫っていた上告人にとって、いささか酷な事態を生じさせたことは想像するに難くないが、原審の認定に係るその余りの諸事情を総合考慮するならば、なお、そのような不利益を法的に受忍させることもやむを得ない程度の高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであると認めることができないものではない」。
(第四銀行事件 最二小判平成9・2・28 民集51巻2号)
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