違法な昇給査定の判例
<判例>
Xは昭和54年4月、Y会社に入社し、平成6年には業務課主任の職にあり、職能資格等級4等級に格付けされていた。
平成6年6月2日、XはYの経営陣を批判する言動をしたことなどから、Yは降格規定の「勤務成績が著しく悪いとき」に該当するとして、平成7年4月1日、Xを3級に降格させる決定をした。
Yの人事考課規程によれば、評定期間を前年4月1日から当年3月31日までの1年間として、毎年4月を評定時期として実施するとされていたが、Xの評定は、降格以後の平成7年4月から同10年4月までいずれも最低のEランクであり、昇給率は低かった。
そこで、Xは、違法な評定は不法行為であり、これによって被った昇給差額に相当する額の損害賠償などを求めて提訴した。
一審判決がXの請求を棄却したため、Xが控訴した。
「昇給査定は、これまでの労働の対価を決定するものではなく、これからの労働に対する支払額を決定するものであること、給与を増額する方向での査定でありそれ自体において従業員に不利益を生じさせるものではないこと、本件賃金規程によれば、Yにおける昇給は、原則として年1回(4月)を例とし、人物・技能・勤務成績及び社内の均衡などを考慮し、昇給資格及び昇給額などの細目については、その都度定めると規程されていること、これらからすると、従業員の給与を昇給させるか否かあるいはその程度昇給させるかは使用者たるYの自由裁量に属する事柄というべきである。
しかし、他方、本件賃金規程が、昇給のうちの職能給に関する部分・・・を・・・職能給級号指数表により個々に定めるとし、本件人事考課規程により、この指数を決定するにつき、評定期間を前年4月1日から当年3月31日までの1年間とする人事評定の実施手順や評定の留意事項が詳細に定められていることからすると、Yの昇給査定にこれらの実施手順等に反する裁量権の逸脱があり、これによりXの本件賃金規程及び人事考課規程により正当に査定されこれに従って昇給するXの利益が侵害されたと認められる場合には、Yが行った昇給査定が不法行為となるものと解するのが相当である」。
(マナック事件 広島高判平成13・5・23 労判811)
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