内部告発の判例
<判例>
訴外A生協の職員であるX1ら3名は、Aの副理事長Y1がAを私物化していると告発する匿名の文書を、Aの総代、理事、職員等に送付した。
この告発文書の送付後、Aの専務理事Y2は、X1らに対し、本件内部告発への関与につき事情聴取を執拗に行った。
その後Aは、X1らを出勤停止及び自宅待機とし、臨時理事会の決議に基づき、「Aの名誉、信用を著しく傷つけられる行為を行った」こと等を理由にX1とX2を懲戒解雇した(懲戒解雇に関しては、地位保全の仮処分が容認され、AがX1らの懲戒解雇を撤回し、X1らは職場復帰している)。
これに対しX1とX2は、Y1及びY2により、不当に長期間の自宅待機や懲戒解雇といった本件内部告発への報復行為をされ、名誉を侵害されて精神的苦痛を受けたとして、Y1とY2の両名に対し不法行為に基づく損害賠償を請求した。
「本件のようないわゆる内部告発においては、これが虚偽により占められているなど、その内容が不当である場合には、内部告発の対象となった組織体等の名誉、信用等に大きな打撃を与える危険性がある一方、これが真実を含む場合には、そうした組織体等の運営方法等の改善の契機ともなりうるものであること、内部告発を行う者の人格権ないしは人格的利益や表現の自由等との調整の必要も存することなどからすれば、内部告発の内容の根幹的部分が真実ないしは内部告発者において真実と信じるについて相当な理由があるか、内部告発の目的が公益性を有するか、内部告発の内容自体の当該組織体等にとっての重要性、内部告発の手段・方法の相当性を総合考慮して、当該内部告発が正当と認められた場合には、当該組織体等としては、内部告発者に対し、当該内部告発により、仮に名誉、信用等を毀損されたとしても、これを理由として懲戒解雇をすることは許されないものと解するのが相当である」。
本件内部告発には正当性が認められるから、それへの報復目的によりなされた懲戒解雇、自宅待機命令等は、無効であるとともに、X1らの雇用契約上の権利および職業生活上の利益を侵害する違法なものであって、不法行為をも構成するものと解すべきである。
これらの処分を主導したY1とY2は連帯して共同不法行為の責任を負う。
(大阪いずみ生協事件 大阪地堺支判平成15・6・18 労判855)
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