配転が権利の濫用
配転とは、同一の企業内において労働者の勤務地や職務内容のいずれかまたは両方を長期間にわたって変更することをいいます。
配転は、労働者の能力開発や適正配置を目的として行われることが多いのですが、不採算部門に生じた余剰人員の採算部門への異動等の雇用調整措置として実施される場合もあります。
使用者は、業務上の必要性から、労働者に配転を命じることもありますが、特に転居を伴う転勤の場合には、労働者に大きな不利益を及ぼすことがあるのですが、最高裁は使用者の配転命令を広く認めています。
勤務地や職種の限定が明確に合意されている場合には、一方的に配転を命じることはできませんが、判例では、限定合意の成立を認めない傾向にあります。
例えば、20年以上にわたり機械工として勤務してきた場合や、放送局のアナウンサー募集に応じて採用されて24年間その業務に従事してきた場合でも、職種限定の合意は認められていない場合があります。
転居を伴う転勤は、労働者の生活関係に影響を及ぼすので、業務の必要性がないとき、必要性はあっても他の不当な動機・目的をもってなされたとき、労働者の通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなど、特段の事情がある場合でない限り、権利の濫用とはなりません。
業務の必要性については、当該労働者の配転が「余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当ではなく」、企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは肯定されるとしています。
また、不当な動機・目的による場合とは、組合嫌悪による場合や報復・嫌がらせによる場合等があります。
労働者の被る生活上の不利益が「通常甘受すべき程度を著しく超える」か否かについて、大阪から名古屋への転勤に伴う家庭生活上の不利益を通常甘受すべき程度のものと判断しています。
また、単身赴任をせざるをえない東京から名古屋への転勤についても、なお通常甘受すべき程度を著しく超えるとはいえないとし、また、3歳の子を養育している女性労働者が、片道1時間4分を要する勤務地への配転を命じられた場合でも、不利益は少ないとしつつも、配転命令を有効と判断しています。
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