出向の無効を争う判例
<判例>
Yは、鉄鋼等の製造・販売等を業とする会社であり、Xらは、Yに昭和36年頃から雇用され、出向命令発令当時、Z製鉄所の生産業務部鉄道輸送部門の職務に従事しており、Yの従業員で組織するA組合の組合員であった。
Yの就業規則には、「会社は従業員に対し業務上の必要によって社外勤務をさせることがある」という規定があり、Xらに適用される労働協約である社外勤務協定において、社外勤務の定義、出向期間(3年以内とする)、出向中の社員に地位、賃金、退職金、各種の出向手当、昇格・昇給等の査定その他処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられていた。
Yは、Zの構内輸送業務のうち鉄道輸送部門の一定の業務を協力会社である訴外B運輸に業務委託することに伴い、委託される業務に従事していたXらに在籍出向を命じた。
Yは、出向命令に不同意であったXらを含む141名に対して、B等への出向を発令し、Xらは不同意のままBに赴任したが、本件命令の無効を争った。
本件「事情の下においては、Yは、Xらに対し、その個別的同意をなしに、Yの従業員としての地位を維持しながら出向先であるBにおいてその指揮監督の下に労務を提供することを命ずる本件各出向命令を発令することができるというべきである」。
「Yが構内輸送業務のうち鉄道輸送部門の一定の業務をBに委託することとした経営判断が合理性を欠くものとはいえず、これに伴い、委託される業務に従事していたYの従業員につき出向措置を講ずる必要があったということができ、出向措置の対象となる者の人選基準には合理性があり、具体的な人選についてもその不当性をうかがわせるような事情はない。
また、本件各出向命令によってXらの労務提供先は変わらないものの、その従事する業務内容や勤務場所には何らの変更はなく、上記社外勤務協定による出向中の社員の地位、賃金、退職金、各種の出向手当、昇格・昇給等に査定にその他処遇等に関する規定等を勘案すれば、Xらがその生活関係、労働条件等において著しい不利益を受けるものとはいえない。
そして、本件各出向命令の発令に至る手続に不相当な点があるともいえない。
これらの事情にかんがみれば、本件各出向命令が権利の濫用にあたるということはできない」。
(新日本製鐵事件 最二小判平成15・4・18 労判847)
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