労働協約の変更の判例
<判例>
Y会社は、昭和40年にA会社の保険業務を引き継いだのに伴い、Aで勤務していた労働者を従前の労働条件で雇用することになったが、定年年齢はA出身の労働者が65歳、その他55歳のままであった。
その後経営危機に直面したYでは、労働組合での討議や投票等を経て、昭和58年に定年を57歳で統一することにし、さらに退職金の計算方法も変更する労働協約を締結した。
Xはその当時53歳の組合員でA出身者であったが、定年年齢および退職金係数の引き下げを不満に思い、65歳定年制を前提とした退職金を得る地位の確認を求める訴えを提起した。
一審では、変更の拘束力が認められ、原審でも同様の結論となったので、Xが上告した。
「以上によれば、本件労働協約は、Xの定年及び退職金算定方法を不利益に変更するものであり、昭和53年度から昭和61年度までの間に昇給があることを考慮しても、これによりXが受ける不利益は決して小さいものではないが、同協約が締結されるに至った以上の経緯、当時のYの経営状態、同協約に定められた基準の全体としての合理性に照らせば、同協約が特定のまたは一部の組合員を殊更不利益に取り扱うことを目的として締結されたなど労働組合の目的を逸脱して締結されたものとはいえず、その規範的効力を否定すべき理由はない。
これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。
本件労働協約に定める基準がXの労働条件を不利益に変更するものであることの一事をもってその規範的効力を否定することはできないし(最高裁・・・平成8・3・26第3小法廷判決)、また、Xの個別の同意または組合に対する授権がない限り、その規範的効力を認めることができないものと解することもできない」。
(朝日火災海上保険事件 最一小判平成9・3・27 労判713)
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