誹謗中傷のビラで懲戒の判例
<判例>
Xは、電力会社Yに雇用され、発電所に勤務する者であった。
昭和44年元旦、Xは、社宅にビラ約350枚を配布した。
Yは、Xが配布したビラの内容が会社を誹謗・中傷するもので、会社と従業員との間の信頼関係を破壊し、ひいては企業秩序の紊乱(ぶんらん)をもたらすものであって、就業規則の懲戒処分に関する定め(「その他不都合な行為があったとき」)に該当するものであるとして、Xをけん責処分に付した。
そこでXは、けん責処分の無効確認と慰謝料の支払を求めて提訴した。
「労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守すべき義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、もって企業の円滑な運営を図るために、その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し、一種の制裁罰である懲戒を課することができるものであるところ、右企業秩序は、通常、労働者の職場内または職務遂行に関係のある行為を規制することにより維持しうるのであるが、職場外でされた職務遂行に関係のない労働者の行為であっても、企業の円滑な運営に支障をきたすおそれがあるなど企業秩序に関係を有するものもあるのであるから、使用者は、企業秩序の維持確保のために、そのような行為をも規制の対象とし、これを理由として労働者に懲戒を課することも許されるのであり(最高裁昭和・・・49年2月28日第一小法廷判決民集28巻)、右のような場合を除き、労働者は、その職場外における職務遂行に関係のない行為について、使用者による規制を受けるべきいわれはないものと解するのが相当である」。
本件では、「ビラの内容が大部分事実に基づかず、または事実を誇張歪曲してYを非難攻撃し、全体としてこれを中傷誹謗するものであり、右ビラの配布により労働者の会社に対する不信感を醸成して企業秩序を乱し、またはそのおそれがあった」ことを認められる。
(関西電力事件 最一小判昭和58・9・8 労判415)
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