社内のメールの監視の判例
<判例>
X1(女性)は、F社Z事業部に勤務する社員であり、YはZ事業部の部長(男性)であった者である。
平成12年2月、YはX1に対して仕事のことで教えてほしいことがある旨のメールを送ったが、X1は仕事を口実として誘いだと思い、Yに批判的なメールを同僚で夫であるX2に対して送信するつもりが、Yに誤送信してしまった。
Yは、この誤送信されたメールを読み、各自の氏名で構成されていたパスワードによりサーバー内に残されていたX1の電子メールを監視するようになり、さらにX1の相談相手である同僚AのメールをY宛に自動送信するように依頼し、引き続き電子メールを監視し続けた。
X1とX2は、YがX1の私的な電子メールを許可なしに閲読したことを理由として、不法行為に基づく損害賠償を求めた。
「会社のネットワークシステムを用いた電子メールの私的使用に関する問題は、・・・いわゆる私用電話の制限の問題とほぼ同様に考えることができる。
すなわち、・・・日常の社会生活を営む上で通常必要な外部との連絡の着信先として会社の電話装置を用いることが許容されるのはもちろんのこと、さらに、会社における職務の遂行の妨げとならず、会社の経済的負担も極めて軽微なものである場合には、・・・会社の電話装置を発信に用いることも社会通念上許容されていると解するべきである。
・・・社員の電子メールの私的使用が・・・その使用について社員に一切のプライバシー権がないとはいえない」。
「しかしながら、・・・社内ネットワークシステムには当該会社の管理者が存在し・・・全体を適宜監視しながら保守を行っているのた通常であり、通常の電話装置の場合と全く同程度のプライバシー保護を期待することはできない」。
監視する立場にない者が監視した場合、専ら個人的な好奇心等から監視した場合、個人の恣意に基づく手段方法により監視した場合など、「社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となると解するのが相当である」。
これを本件に照らすと、X1らによる電子メールの私的利用は合理的な限度を超えており、Yによる監視行為が社会通念上相当な範囲を逸脱したものであったとまではいえず、X1らが法的保護に値する重大なプライバシー侵害を受けたとはいえない。
(東京地判平成13・12・3 労判826)
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