職場のいじめで自殺の判例
<判例>
訴外Aは、Y1(川崎市)の水道局職員であり、平成7年5月に工業用水課工務係に配属された。
Aは、勤務後1ヶ月を経過した頃から、Y2(課長)、Y3(事務係長)、Y4(主査)から「いじめ」を受けるようになった。
その内容は、Aの容姿を嘲笑したり、性的にからかったり、「何であんなのがここに来たんだよ」と聞こえるように言ったり、果物ナイフを示しながら「今日こそは刺してやる」と発言したりするものであった。
さらに、Y2〜Y4は、いじめの実態調査が行われることを知ると、それがAの被害妄想である旨の口裏あわせを近隣職員に働きかけ、職員課長によるY2を含む職員への調査ではいじめの事実を確認することができなかった。
Aは、以前は欠勤することが稀であったが、上記の部署に配属されて以降の同年9月頃から休みがちになり、12月からはほとんど出勤できなくなった。
その後、数度の自殺未遂を起こし、複数の医療機関で治療が続けられたが、平成9年3月に自宅において自殺した。
そこで、Aの両親であるXらが、Y1〜Y4に対して国賠法に基づく損害賠償請求を提起したのが本件である。
「一般的に、市は市職員の管理者的立場に立ち、・・・職員の安全の確保のためには、職務行為それ自体についてのみならず、これと関連して、ほかの職員からもたらされる生命、身体等に対する危険についても、・・・加害行為を防止するとともに、・・・被害職員の安全を確保して被害発生を防止し、職場における事故を防止すべき」安全配慮義務があると解される。
関係者の地位・職務内容に照らすと、Y2は、Y4などによるいじめを制止するとともに、適切な処置をとり、また、職員課に報告して指導を受けるべきであったにもかかわらず、いじめを制止しないばかりか、これに同調していたもので、調査を命じられても、いじめの事実がなかった旨を報告した。
「また、Aの訴えを聞いた課長は、直ちに、いじめの事実の有無を積極的に調査し、速やかに善後策・・・を講じるべきであったのに、これを怠り、いじめを防止するための職場環境の調整をしないまま、Aの職場復帰のみを図ったものであり、その結果、不安感の大きかったAは復帰できないまま、症状が重くなり、自殺に至ったものである」。
「したがって、Y2及び課長においては、Aに対する安全配慮義務を怠ったものというべきである」。
「公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合には、国または地方公共団体がその被害者に対して賠償の責任を負うべきであり、公務員個人はその責を負わないので、Y2〜Y4がその職務を行うについてAに加害行為を行った場合であるから、Xらの上記損害額の7割を減額するのが相当である」。
(川崎市水道局事件 横浜地判平成14・6・27 労判833)
転職サイトを使いこなす!
スポンサードリンク
|
|