就業規則の定年後給与改定の判例
<判例>
Y会社が昭和36年に定めた就業規則では、55歳定年制を規定していたが、実際には、従業員が55歳に達したときに本人が希望し、会社が必要と認めた者には、1年ごとの契約で嘱託社員として勤務する制度が存在しており、その給与は18万5000円であった。
ところが、平成10年の高年法改正にあわせて、Yは同年5月に就業規則を改定して定年を60歳と定め、さらに、満55歳に達すると役職を解かれ新嘱託社員となることとし、その給与は基本給19万円および勤務手当1,000円から3万円と定めた。
Xらは、平成11年から平成15年までの間にそれぞれ55歳に達し新嘱託社員となった者であるが、新嘱託規定に基づく賃金額は、55歳になる直前と比較して、約29%から42%の減額であるとして、差額等を請求した。
「本件就業規則の変更は不利益変更ではなく、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課するものではない」から、「当該条項がそのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるか否かの判断基準によって、変更の法的効力を判断すべき場合ではない」。
ただ、「就業規則が使用者と労働者の間の労働関係を規律する法的規範性を有するための要件としての、合理的な労働条件を定めていることは、単に、法令または労働協約に反しない(労基法92条1項)というだけでなく、当該使用者と労働者の置かれた具体的な状況の中で、労働契約を規律する雇用関係についての私法秩序に適合している労働条件を定めていることをいうものと解するのが相当である。
特に本件就業規則の変更が改正後の高齢者雇用安定法の施行により、60歳を下回って定年を定めることのできないものとされたことに対応するためのものであったところ、上記改正後の高齢者雇用安定法では、定年延長後の雇用条件について、延長前の定年直前の待遇と同一とすることは定められていないことからすれば・・・就業規則に定められた従前の定年から同法に従って延長された定年までの間の賃金等の労働条件が、具体的な状況に照らして極めて苛酷なもので、労働者に同法の定める定年まで勤務する意思を削がせ、現実には多数の者が退職する等高年齢者の雇用の確保と促進という同法の目的に反するものであってはならないことも、前記雇用関係についての私法秩序に含まれるというべきである」。
(協和出版販売事件 東京高判平成19・10・30 労判963)
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