上司の教育訓練の判例
<判例>
組合員であるXは、作業服に組合のマーク入りのベルトを着用して就労していたところ、上司Aから就業規則に違反するとしてその取り外しを命じられたが、これに反発したため、翌日の始業時から午後4時半ごろまで就業規則の書き写し等をさせられ、翌日も午前中Xが腹痛を訴えるまで続けられた。
これに対して、Xは、Aが教育訓練として命じた本件就業規則の書き写し等が、違法な業務命令であるとして、Y会社およびAを相手に慰謝料として損害賠償を求めた。
最高裁は、以下のような原審の判断を是認した。
「Yの管理職職員が部下職員に対し、いつ、いかなる内容の教育訓練を行うかは原則としてその裁量に委ねられているというべきであるから、管理職職員が部下職員に対して、就業規則の周知、徹底のため教育訓練を命ずることも直ちに違法となるものではない」。
「本件教育訓練の主たる内容である就業規則の全文書き写しは・・・は、一般にそれを命ぜられた者に肉体的、精神的苦痛を与えるものであり、しかも、その合理的教育的意義を認め難いこと、Aの態度には、Xに対して心理的圧迫感、拘束感を与えるものがあり、合理的理由なくしてXの人格を徒らに傷つけ、また、その健康状態に対する配慮も怠ったこと、勤務時間中、事務室で長時間に亘り行われるなどの前記諸事情に鑑みると、Aの命じた本件教育訓練は、Xに就業規則を学習させるというより、むしろ、見せしめを兼ねた懲罰的目的からなされたものと推認さざるを得ず、その目的においても具体的態様においても不当なものであって、Xに故なく肉体的、精神的苦痛を与えてその人格権を侵害するものであるから、教育訓練意ついてのAの裁量を逸脱、濫用した違法なものというべきであり、これがAのXに対する不法行為を構成することは明らかであるし、また、これがAの職務に関してなされたことも明白である」。
(JR東日本本荘保線区事件 仙台高秋田支判平成4・12・25 労判690 最二小判平成8・2・23 労判690)
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