試用期間の法的性質の判例
<判例>
Xは、昭和38年にY会社に採用され、3ヶ月の試用期間の満了直前に、本採用拒否が通知された。
Xが身上書に虚偽の記載をし、または記載すべき事項を秘匿し、面接試験でも虚偽の解答を行ったからという理由をYは主張した。
その具体的内容とは、違法な学生運動へ参加したこと、生活協同組合の理事であったこと、である。
Xは労働契約関係存在確認請求を求め、地裁、高裁のいずれも、Xの請求を認容した。
これに対して、Yが上告したのが本件である。
「試用契約の性質をどう判断するかについては、就業規則の規定の文言のみならず、当該企業において試用契約の下に雇用されたものに対する処遇の実情、とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行のいかんをも重視すべきものである・・・本採用の拒否は、留保解約権の行使、すなわち雇入れ後における解雇に当り、これを通常の雇入れの拒否の場合と同視することはできない」。
「解約権の留保は、大学卒業者の新規採用にあたり、採否決定の当初においては・・・適切な判定資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨であり、一定の合理的期間の限定の下にこのような留保約款を設けることも、合理性をもつものとしてその効力を肯定することができる」。
それゆえ「留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず・・・広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない」。
「しかしながら、・・・法が企業者の雇用の自由について雇入れの段階と雇入れ後の段階とで区別を設けている趣旨にかんがみ、・・・留保解約権の行使は、上述した解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されると解するのが相当である」。
「企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしてその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができる。
(三菱樹脂事件 最大判昭和48・12・12 民集27巻11号)
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