求人票記載の労働条件の判例
<判例>
Xは、Y会社がなした公共職業安定所への求人募集に応募して採用された。
Y会社は正社員ではなく期間の定めのある特別職を雇用する意図のもとにXを採用したのであったが、Yが公共職業安定所に提出していた求人票には、雇用期間について記載する欄に「常用」と記載されていた。
採用後6ヶ月の試用期間が満了した後、Yは、雇用期間を6ヶ月とする契約書(以下「本件契約書」という)を作成し、Xの署名を求め、Xがこれに署名した。
Yは、本件契約書の締結の結果、6ヶ月経過後に、期間満了により雇用契約は終了したものとした。
そこで、Xが、XとYとの間の雇用契約は求人票に記載のとおり期間の定めのないものであると主張して、Yの従業員としての地位の確認を求めて提訴した。
一審がXの請求を認容したため、Yが控訴した。
職業安定法5条の3第1項は、求人者は求人の申込に当り公共職業安定所に対し、その従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示すべき義務を定めているが、その趣旨とするところは、積極的には、求人者に対し真実の労働条件の提示を義務付けることにより、公共職業安定所を介して求職者に対し真実の労働条件を認識させたうえ、ほかの求人との比較考慮をしていずれの求人に応募するかの選択の機会を与えることにあり、消極的には、求人者が現実の労働条件と異なる好条件をえさにして雇用契約を締結し、それを信じた労働者を予期に反する悪条件で労働を強いたりするなどの弊害を防止し、もって職業の安定などを図らんとするものである。
かくの如き求人票の真実性・重要性、公共性等からして、求職者は当然求人票記載の労働条件が雇用契約の内容になるものと考えるし、通常求人者も求人票に記載した労働条件が雇用契約の内容になることを前提としていることに鑑みるならば、求人票記載の労働条件は、当事者間においてこれと異なる別段の合意をするなど特段の事情がない限り、雇用契約の内容になるものと解するのが相当である」。
「Yは、本件求人票をの雇用期間欄に「常用」と記載しながら具体的に雇用期間欄への記載をしなかったものであるから、Yの内心の意思が・・・期間の定めのある特別職を雇用することにあったにせよ、雇用契約締結時に右内心の意思がXに表示され雇用期間について別段の合意をするなどの特段の事情がない限り、右内心の意思にかかわりなく、本件求人票記載の労働条件にそった期間の定めのない常用従業員であることが雇用契約の内容となるものと解するのが相当である」。
本件については、そうした特段の事情は認められない。
(千代田工業事件 大阪高判平成2・3・8 労判575)
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