労働法の使用者とは
労働基準法では、@事業主、A事業の経営担当者、B事業主のために行為をする全ての者を使用者と定めています。
労働基準法第十条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
これは、労働基準法上定められた責任の主体を明確にし、現実の行為者の主体とすることを示したものであり、@は個人企業では企業主個人、法人組織では法人そのものであり、Aは法人の代表者、取締役または支配人などの事業経営一般について権限と責任を有する者、Bは事業主のために、人事、給与など労働条件の決定や労務管理を行い、業務命令を発し指揮監督する権限を行使する部長・課長・係長・現場監督などが含まれます。
この定義に合致する使用者が、労働基準法が定める義務を履行しない場合には、罰則の対象となり、課長・係長などによる労働基準法違反の責任については、両規定により、当該行為者だけでなく、事業主も処罰されます。
労働基準法第百二十一条 この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても各本条の罰金刑を科する。ただし、事業主(事業主が法人である場合においてはその代表者、事業主が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人である場合においてはその法定代理人(法定代理人が法人であるときは、その代表者)を事業主とする。次項において同じ。)が違反の防止に必要な措置をした場合においては、この限りでない。
2 事業主が違反の計画を知りその防止に必要な措置を講じなかつた場合、違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた場合又は違反を教唆した場合においては、事業主も行為者として罰する。
労働契約法では、「この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう」としています。
(定義)
労働契約法第二条 この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。
2 この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。
この使用者とは、労働基準法上の事業主に相当するものとされますが、労働契約上の使用者としての責任を負う主体は、必ずしも契約上の当事者である使用者に限定されるわけではなく、直接的な契約関係がない場合であっても、使用者の責任を負わせる場合があります。
例えば、契約当事者以外の者が指揮命令を行い、当事者としての使用者が独立性を欠き名目的な労務管理の代行機関のようになっていて、実際に労働条件を決めているのが、労働者に指揮命令をしている当事者以外の者である場合に、「黙示の労働契約」が認められる場合があります。
また、親会社が子会社の株式の相当部分を保有し、その役員や管理職を派遣するなどして、企業活動の全ての面で子会社が親会社の一事業部門に過ぎなくなっている状況のもとで、親会社が子会社の労働組合を壊滅する目的で子会社を解散させた場合には、子会社の労働者は直接親会社に対して未払賃金の支払や労働契約上の地位を確認することができることがあります。
労働組合法上の使用者については、定義規定はないのですが、近い将来使用者となることが確実な者、および近い過去に使用者であった者は、使用者とされることがあります。
例えば、会社合併の直前の段階で、吸収会社による被吸収会社の従業員や労働組合に対する不当労働行為や解雇された者からの団交申入れなどがあります。
また、親会社が子会社の経営を完全に支配下に置き、子会社が親会社の一部門とみなされるような場合には、法人格否認の法理により、親会社の使用者が子会社の労働者にとって使用者とみなされることがある。
さらに、雇用主以外でも、労働条件の決定権限や監督権限を現実かつ具体的に有するものを「使用者」と解されることがあります。
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