成果主義についての判例
<判例>
人事考課の適否を巡る立証には難しい点があることは否定できない。
しかし、いずれにしても、人事考課をするに当り、評価の前提となった事実について誤認があるとか、動機において不当なものがあったとか、重要視すべき事項を殊更に無視し、それほど重要でもないことを強調するとか等により、評価が合理性を欠き、社会通念上著しく妥当を欠くと認められない限り、これを違法とすることはできないというべきであるが、本件においては、各証拠によるもこれらの事情が存在したと認めることはできない。
(光洋精工事件 大阪高判 平9・11・25 労判729) |
人事考課上、特段大きく否定的に評価されるような事情が見受けられないにもかかわらず、全く昇進しておらず、低い評価を受け、目的も不明なまま国内留学を命ぜられ、さらには、業務上の必要性もなく総務課に配属され良好とは言い難い執務環境の中で執務を行わざるをえない状況に置かれたことは差別的処遇である。
(倉敷紡績事件 大阪地判 平15・5・14 労判859) |
一般的に、賞与が功労報償的意味を有していることからすると、賞与を支給するか否かあるいはどの程度の賞与を支給するか否かにつき使用者は裁量権を有するというべきである。
しかし、賞与はあくまで労働の対価たる賃金であり、本件賞与規定が、会社の経営状態が悪化した場合を除いては原則として賞与を支給すると定め、支給時期、算定期間、支給額の算定基準を明確に規定し、本件人事考課規程により、支給額決定のための評点を決定するにつき、業績結締の実施手順等に反する裁量権の逸脱があり、これにより一審原告の本件賞与規程及び人事考課規程により正当に査定されこれに従った賞与の支給を受ける利益が侵害されたと認められる場合には、一審被告が行った賞与査定が不法行為となるものと解するのが相当である。
(マナック事件 広島高判 平13・5・23 労判811) |
考課は業績だけでなく、職務上の交渉相手や関連組織との人的関係や職場内の協調性など、数字だけでは表せない要素を総合して行われるものであるところ、第一次考課は、原告の日常の仕事ぶりを直接見ている課長が、このような直接的な業績以外の諸要素も総合して行っていること、被告会社では損害調査専門職員はH1やA、Bといった低い評価を受ける者が少ないこと、原告は平成8年以前から行動評価や成果は高くなかったことなどの事情も併せて考えると、平成9年度及び平成10年度の各考課が考課者に付与された裁量を逸脱濫用するものとまでは認められず、これらの考課が不当であって、原告の権利・利益を侵害し、あるいは、労働契約上の債務の不履行に当るとはいえない。
(損害保険ジャパン事件 東京地判 平18・9・13 労判931) |
人事評価に当っては、基本的に使用者の裁量が認められるところ、仮に営業経験のない者にとってはおよそ上げることが不可能な成果を求めたり、担当した顧客によってはおよそ上げることが不可能な成果を求めたりして、その成果を上げられないことを理由に原告らをD評価と査定したという場合には、その評価に合理性が認められない場合もありえる。
(NTTコミュニケーションズ事件 大阪地判 平17・11・16 労判910) |
就業規則が給与の減額の根拠規程になるといっても、給与という労働者にとって最も重要な権利ないし、労働条件を変更するものであることに照らすと、使用者のまったく自由裁量で給与の減額を行うことが許容されたものとは到底解されない。
これらの規定が能力型の給与体系の採用を背景に導入されたことに鑑みれば、給与の減額の程度が当該労働者に対する適切な考課に基づいた合理的な範囲内にあると評価できることが必要であると解すべきである。
(日本ドナルドソン青梅工場事件 東京高判 平16・4・15 労判884) |
労働契約内容として、成果主義による基本給の降給が定められていても、使用者が恣意的に基本給の降給を決することは許されないのであり、降給が許容されるのは、就業規則等による労働契約に降給が規定されているだけでなく、降給が決定される過程に合理性があること、その過程が従業員に告知されてその言い分を聞く等の公正な手続が存することが必要であり、降給の仕組み自体に合理性と公正さが認められ、その仕組みに沿った降給の措置が採られた場合には、個々の従業員の評価の過程に、特に不合理ないし不公正な事情が認められないかぎり、当該降給の措置は、当該仕組みに沿って行われたものとして許容されると解するのが相当である。
(エーシーニールセン・コーポレーション事件 東京地判 平16・3・31 労判873) |
転職サイトを使いこなす!
スポンサードリンク
|
|