人事権についての判例
人事権の行使とは、使用者に委ねられた経営上の裁量判断に属する事柄であり、裁量を逸脱し権利の濫用にあたると認められない限り違法ではないとされています。
人事権の濫用となる場合とは、次のような裁量を脱した場合が考えられます。
@法で禁じられること
A差別や人格侵害にあたること
B不法・不当な目的によること |
<判例>
被告耳鼻咽喉科の事務分掌については、被告Bが権限を有しているものと認められ、原告に対して臨床を担当させるか否か、担当させるとしていかなる職務を担当させるのかについても、原則としては被告Bの裁量に委ねられているというべきである。
しかしながら、そのような裁量も無制限、無限定なものではあり得ず、特定の者に対する扱いが、その裁量を逸脱、濫用するものであると評価される場合には違法になるというべきである。
(学校法人兵庫医科大学事件 大阪高判 平22・12・17 労判1024) |
原告に対してどのような業務を担当させるか、また、どこで就業させるかは、使用者たる被告が裁量によって決定し、業務命令により指示し得る事項ではあるが、右のように、教師として労働契約を締結した原告に対し、長期間にわたって授業及び校務分掌を含む一切の仕事を与えず、しかも、一定の時間に出勤して勤務時間中一定の場所にいることを命ずることは、生徒の指導・教育という労働契約の基づいて原告が供給すべき中心的な労務とは相容れないものであるから、特に原告の同意があるとかまたは就業規則に定めがあるというものではない以上、一般的にも無理からぬと認められるような特別の事情がない限り、それ自体が原告に対して通常甘受すべき程度を超える著しい精神的苦痛を与えるものとして、業務命令権の範囲を逸脱し、違法であるというべきである。
(松蔭学園事件 東京高判 平5・11・12 判時1484) |
労働者が配転の必要性について理解を示さないからといって、翻意を促すための手段として、使用者において、労働者に対し、意向打診、説得の範囲を超えて、嫌がらせ等の行為をすることは許されるのものではなく、また、労働者は、労働契約上の地位に基づき、勤労を通じ自己を実現していく権利を有することも論を待たないところであるから、業務指示をしない措置が、不法な動機に基づき、または理由もなく、雇用関係の継続に疑問を差し挟める程度に長期にわたる場合等、信義則に照らし合理的な裁量を逸脱したものと認められる場合は、違法性を帯び、不法行為を構成するものと解される。
(ネスレ配転拒否事件 神戸地判 平6・11・4 労判925) |
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