従業員の協調性の判例
企業の成り立ちのためには、従業員同士の協調性は欠かせない要件であり、就業規則や服務規定などでも、協調性を厳しく規定しています。
会社という集団で求められる協調性とは、単に多数や力のある者に迎合することや、従順で仕事についての苦情を言わないといったものではなく、会社の目的にそった運営のために企業秩序を守り、利益を上げることに向けて協力的な姿勢を示すことにあります。
<判例>
申請人が他の従業員との協調性を欠くというだけでは、業務内容が異種の部門への配置転換をする業務上の必要性があったとすることは困難であるし、さらに、被申請人に配送部の希望に従った配置転換の必要性があったとしても、実質的にはシステム課内で敬遠されてるというだけの理由から配送部の業務に適性のない申請人をその配置転換の対象としたのは、合理的でない人選というべきであって、本件配転命令は、課内に置いておくといわば扱いにくい申請人をできれば課外に出したいというシステム課の暗黙の期待を被申請人が安易に容認したことによるものとみることができる。
従業員の配置転換に関する被申請人の就業規則の定めは、配置転換ができる場合を業務上の必要がある場合に限定したものと解されるが、さらに、業務上の必要性がある場合であっても、その配置転換が、不当な動機、目的によってされたとき、または労働者に対して通常受忍すべき程度を超える損害を与えるものである時は、権利濫用(人事権の濫用)として無効になるというべきである。
(讀宣事件 大阪地判 平3・3・29 労判581 |
他の従業員との対立は、他の従業員が本人の人格態度に対する漠然とした嫌悪感情を抱いているにとどまり、それ以上に、本人が他の従業員との間に重大な紛争を生じ、あるいは本人と他の従業員の感情的な対立により会社の駐車場業務の遂行に現実に著しい支障をきたした事実は認められないし、かつ、会社の業務は、駐車場に出入りする車両の監視・誘導と料金徴収という比較的単純な作業を主体とするものであって、従業員間の緊密な協調がなければ業務遂行が不可能となる類のものとも認められない。
(大阪地判 平4・9・8 労判619) |
本人は、上司の業務命令であっても自らの考えに照らし不合理なものであれば従う必要はなく、その場合には上司を大声で罵倒してもよいと考えており、現実にもそのように振る舞い、また、意見があわない同僚と意見が異なった場合に相手を大声で罵倒するような行動に出ていたのであり、その結果、上司は本人に対する指示や注意を控えるようになり、同僚も本人を避けるようになって、業務の円滑な遂行に支障が生じていたことが認められる。
これらの事実に照らせば、本人は、上位の指揮権に従って業務を遂行しようとする意識ないしは同僚と協調して職務を遂行しようとする意識に著しく欠けていたことが明らかである。
(高島屋工作所賃金等請求事件 大阪地判 平11・1・29 労判765) |
原告は、東京研修室配属以降も、自己中心的であり、上司の注意や業務命令の対して、あれやこれや述べて反発するばかりで従わず、非常識な言動がみられ、昇格異議申立書において、上司・同僚を中傷・誹謗したもので、このような原告の勤務態度及び言動は、職場の人間関係及び秩序を著しく乱し、業務に支障をきたすものと認められる。
原告が右勤務態度及び言動について全く反省していないこと及び東京研修室配属以前の勤務態度も併せ考慮すれば原告の右勤務態度及び言動は、旧協約第34条2号及び3号に該当し、かつ、解雇手続にも瑕疵は認められず、本件解雇は有効であると言うべきである。
(日本火災海上保険事件 東京地判 平9・10・27 労判726) |
原告は、被告との間で嘱託社員契約を締結し、一度これを更新したにもかかわらず、奈良事業所での職務に習熟せず、指導を受けるべきAとの不和から仕事上の問題点を大阪事業所のセクレタリー等に再三問い合わせ、それでもなお職務成績に改善が見られず、あまつさえ、Aへの反発から、Aが勤務表を改ざんしたと主張したり、同人とBが愛人関係にある、右両名は結託して奈良営業所の女性従業員を辞めさせた等の風評を電話などで吹聴し、さらには使途不明金の件も含めて的確な事実確認をせず、被告の会社組織を無視して東京本社にいわば直訴するなどの行動に及んだ。
本件解雇は、社会通念上相当なものとしてこれを是認することができ、解雇権の濫用であるというべき余地はない。
(学研ジー・アイ・シー解雇無効確認等請求事件 大阪地判 平9・3・26 労判716) |
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