昇進と会社の安全配慮義務
最近では、昇進など仕事上の責任が増えたことが原因で、うつ病になることが問題になっています。
これについて、昇格や昇任にかかわって業務の負担が増え、それに対する適切なフォローがないためうつ病を発症したとして、会社の安全配慮義務が問われていることも多いのです。
この場合では、昇進に対して会社が昇進させることについて十分に検討したか、管理職に就くことに対するフォローが十分であったかなどが問題になります。
<判例>
控訴人は、故Aを過重な長時間労働の環境に置き、これに加え、故Aがリーダーへ昇格したことなど心理的負担の増加原因が発生していたにもかかわらず、故Aの実際の業務負担量や職場環境などに何ら配慮することなく、その状態を漫然と放置していたのであって、かかる控訴人の行為は、不法行為における過失(注意義務違反)をも構成するものというべきである。
そして、控訴人が、まずは故Aの労働時間を適正な程度に抑えることを前提に、故Aの精神面での健康状態を調査し、改めて故Aについて休養の必要性について検討したり、たとえば異動についての希望聴取を行い、改めて故Aについて休養に適した配属先への異動を行うなどの対応を取っていれば、同年5月14日に故Aが自殺により死亡することを防止し得る蓋然性は高かったといえる。
したがって、上記控訴人の安全配慮義務違反(注意義務違反)と本件自殺との間に因果関係があるというべきである。
(山田製作所事件 福岡高判 平19・10・25 労判955) |
Aはもともと主任の仕事の質・量からして主任になることに不安を抱いていたこと、実際にも主任昇格と同時に仕事のラインが変わったこと等もあり、主任として部下の仕事のチェックや指導をしなければいけないことは分かっていながら、自己の仕事に追われて十分な指導はできなかったこと、その上、Aの上司であるBは、Aの主任昇格に際して、書き直しまで命じて、Aが能力において不足することを明記させ、かつ、昇格後の担当者の業務についても全面的に責任を負う内容の文章を作成させ、更に、Aに対して、「主任失格」という文言を使って叱責していたこと、これらを併せて考えると、具体的なAの置かれた状況下では、主任への昇格は、通常の「昇格」よりは、相当程度心理的負荷が強かったものと理解することが相当である。
(中部電力事件 名古屋高判 平19・10・31 労判954) |
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