仕事のミスで損害賠償の判例

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仕事のミスで損害賠償の判例

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仕事のミスで損害賠償の判例

就労中に発生した労働者のミスによる損害は、懲戒の対象となるだけでなく、損害賠償の対象となる場合もありますが、通常、仕事中のミスで会社に多少の損害を与えても、それは会社が企業活動で利益をあげるなかで生じるやむを得ない、受忍すべきリスクであると考えられています。

そうした損失は予定された損失として個人には請求されることがないというのが原則で、これは労働基準法で定められている損害賠償の予定の禁止からきています。

(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償の予定をする契約をしてならない。


ただし、故意や重過失、犯罪の場合は別で、判例でも、高速道路切符の横領、不正な経理操作による着服などの事件では損害賠償を認めています。

使用者の利益のために活動する義務がある被用者が、自己または競業会社の利益を図る目的で、職務上知りえた使用者が顧客に提示した販売価格を競業会社に伝えるとともに、競業会社を顧客に紹介したり、競業会社が使用者の協力会社であるかのように装って競業会社に発注させたり、上司に競業会社がより安い価格で顧客と契約する可能性があることを報告しなかった行為であるから、雇用契約上の忠実義務に違反する行為であるとともに、原告の営業上の利益を侵害する違法な行為であるというべきである。

(エープライ損害賠償事件 東京地判 平15・4・25 労判853)

通常の人の能力を前提にした場合、このような複雑多様な業務を大量に、しかもその多くを手作業で処理する中で、個々に観察すればその事務を取り扱った職員の不注意に基づくものであるといえるにしても、一定期間及び一定数の職員を母体として観察すれば、いわゆる過不足が発生するのは必然であり、やむを得ないことのように考えられる。

(郵便局不足請求事件 東京高判 平14・9・11)

使用者が、その事業執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被りまたは使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散について使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求ができる。

(茨城石炭商事損害賠償請求上告事件 最一小判 昭51・7・8 民集30巻7号)

原告には被告の主張する顧客先への請求書未提出行為が存在する。

しかし・・・@請求書未提出が発生したのは、原告に対する平成13年秋以降の過重な労働環境にも一因があること、A債権回収不能額はそのすべてが原告の請求書未提出と相当因果関係があるわけではないこと、B原稿は被告の従業員として30年3ヶ月働き、その間一度も超過処分を受けたことがなく、平成13年から約1年で一億円もの受注高をあげていること、C原告が退職した場合の本件退職金額は被告の主張する債権回収不能額を約500万円も上回る額であること、D被告では平成11年にも本件と同様の事件が起きているのに、再発防止に適切な体制をとっているとは言い難いこと、E被告の主張する債権回収不能の事態が発生したのは原告だけの責任ではなく、B部長、C専務の責任であるのに、これらの上司は何らの処分もなく、かえって昇進している事実が認められ、これらの事実に照らすと、被告の主張する前記請求書未提出等の事実をもって、「再三注意をしたにもかかわらず業務に対する熱意誠意がなく怠慢な者」に当ると評価することは困難であり・・・。

(東京地判 平15・10・29 労判867)

使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により直接損害を被った場合、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防ないしは損失の分散についての配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し同損害の賠償を請求することができるものと解すべきである、

そして、Bの就業規則が「従業員が故意または重過失により会社に損害を与えた場合は、損害の一部または全部を賠償させることがある」旨定めるのも、上記と同様の観点から、過失が軽過失に留まる場合は不問とし、故意または重過失による場合であっても、事情により免責または責任を軽減することを定めたものと解される。

(ガリバーインターナショナル事件 東京地判 平15・12・12 労判870)

企業において、営業目標を社員に示し、その達成ができるよう、社員を督促、激励し、あるいは成果に応じた人事の体制を作ること自体は責められるべきことではないが、原告におけるそれは、上記事情に照らすと行き過ぎたものになっていたと言わざるを得ず、これが社員に対する過度な圧力となり、本件における被告やB支店長のような原告の定めた貸付基準に違反する行為に走る社員を生み出したという意味では、原告においても本件違反の原因の一端を形成したと評価されてもやむを得ない。

被告が負担すべき損害額を算定するに当っても、このような原告側の事情は、損害の公平な分担という見地から斟酌されるべきである。

(東京地判 平17・7・12 労判899)

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