会社内部告発の判例2
<判例>
「形式的には、窃盗にあたるといえなくもない」が窃盗罪として処罰されるほどに悪質な行為ではなく懲戒事由に該当しないとした上、会社内部の不正疑惑を解明する目的でなされた行為は、会社の利益に合致するところもあり、懲戒解雇の相当性判断においては、違法性は大きく減殺される。
(宮崎信用金庫事件 福岡高宮崎支判 平14・7・2 労判833) |
本件内部告発において用いられた一手段が不相当であったとしても、場合により個別の行為について何らかの処分に問われることは格別、本件内部告発全体が直ちに不相当なものになると解すべきではなく、本件内部告発の目的や、内容、とられた種々の手段等を総合的に判断してそれが正当かどうかを判断すべきと解される。
そして、いずみ生協が管理する多種の文書を無断で複製して持ち出した点は、本件のような内部告発を行うためにはこうした行為が不可欠というべきものである一方、持ち出した文書の財産的価値自体はさほど高いものではなく、しかも、原本を取得するものではないから、いずみ生協に直ちに被害を及ぼすものではない。
したがって、いずみ生協を害する目的で用いたり、不用意にその内容を漏洩したりしないかぎりは、本件内部告発自体を不相当とまではいえないものと解すべきである。
(大阪いずみ市民生協事件 大阪地堺支判 平15・6・18 労判855) |
本来、Bとしては、事務局トップであるC常任理事の不適切な行動について指摘する本件報告書を真摯に取り上げて、内部調査等を実施したうえで、C常任理事に対する適切な指導や処分を講ずるべきであったが、これをせず、本件降格人事を行い、そして、無効な本件解雇をするに至ったもので、このような一連の経緯からすると、かかる対応には、少なくとも過失があったと言わざるを得ず、Bは、Aに対する不法行為責任を負い、Bの前記一連の措置によってAが被った精神的苦痛に対する賠償をすべきである。
(骨髄移植推進財団事件 東京地判 平21・6・12 労判991) |
被控訴人は、A教育長宛に送付した本件書簡のセクハラに関する記事により控訴人の社会的評価を低下させ、名誉を毀損したというべきであり、控訴人は外語短大の教授の地位にあったものであるところ、前記のとおり右記事の記載内容は控訴人がセクハラを常態とし教育者としての資格がないという趣旨のものであったこと、これにより控訴人は任命権者である教育長から第三者立会いの上で右記事記載の事実について究明を受けたことなどの諸事情を総合勘案すると、被控訴人の右名誉毀損の不法行為によって控訴人が被った精神的損害に対する慰謝料として50万円と認めるのが相当である。
なお、被控訴人の右発言に相当する控訴人のセクハラ事案については、これが真実であるとか、被控訴人においてこれが真実であると信ずるについて相当の理由があったことについては主張立証がなく・・・これが真実であるとか、真実であると信ずべき相当の理由があったことを認めることができない。
(神奈川県立外語短期大学損害賠償請求事件 東京高判 平11・6・8 労判770) |
本件告発行為は、いずれも、被控訴人から強制わいせつ行為を受けた不法行為の被害者である控訴人が、被控訴人から適切な被害回復を得られないために、自分が真実と考えることを主張して加害者である被控訴人を社会的に告発しようとした行為に他ならず、このうち、本件提訴行為及び本件告発行為は、その主張する事実が真実である以上、いずれも被控訴人が勤務する職場を所管する県の部局の部長及び課長、職場の学長及び事務局長などの限定された者6名に対して、被控訴人の処分を求めて事件を告発したものであって、その内容においても、事実の詳細が性格に述べられずに抽象的な表現がなされてはいるものの、ことさら虚偽や誇張が含まれているわけではなく、いずれにしろ正当な権利行使の範囲内に留まる行為であって、違法とまでいえないことは明らかである。
(秋田県立農業短期大学事件 仙台高秋田支判 平10・12・10 労判756) |
一般的に、本件店舗のような店で店員として勤務する従業員は、雇用契約上の具体的義務として、客による万引きを防止する等の防犯義務を負担するほか、信義則に基づくいわゆる誠実義務として、雇用主に経営上の損害を与えないよう配慮すべき義務、すなわち、自らの店の商品を盗取するなどの不正行為をしないことはもとより、他の従業員による不正行為を発見した時は、雇用主にこれを申告して被害の回復に努めるべき義務をも負担するものと解するのが相当である。
そして、従業員自らが商品を盗取するなどの不正行為をした場合にはこれが不法行為を構成することは明らかであるが、更に、他の従業員による不正行為を発見しながらこれを雇用主に申告しないで被害の発生を放置した場合には、その不作為が前記内容の誠実義務に違反する債務不履行を構成するのみならず、その不作為によって他の従業員による不法行為(不正行為)を容易にしたものとして、不法行為に対する幇助が成立するものというべきである。
(さえき事件 福岡地小倉支判 平10・9・11 労判759) |
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