企業の安全配慮義務の判例

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企業の安全配慮義務の判例

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企業の安全配慮義務の判例

使用者である被告は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が蓄積して労働者の健康を損なうことがないように注意する義務を負うと解される。

前記で認定した事実によれば、被告はAに陳旧性心筋梗塞の既往症があり、合併症として高脂血症に罹患していたことを前提に、Aに対して指導区分「要注意」の指定をし、原則として、時間外労働や休日勤務を禁止し、過激な運動を伴う業務や宿泊を伴う出張をさせないこととしていたのであるから、その例外事由としてのやむを得ぬ理由があるかどうかの組織の長と健康管理医との協議に際しては、Aのその後の治療経過や症状の推移、現状等を十分に検討した上で時間外労働や宿泊出張の可否が決定されるべきであったというべきである。

被告は、比較的安定していたAの生体リズム及び生活リズムに大きな変化を招来し、これを壊しかねない本研修への参加を止めさせるべきであったというべきであり、それにもかかわらず、被告はAを本件研修に参加させた過失がある。

よって、被告は、民法715条に基づき、Aが死亡したことにより、同人及びその相続人である原告らが被った損害を賠償する責任がある。

(NTT東日本北海道支店事件 札幌地判 平17・3・9 労判893) 

(使用者等の責任)
民法第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。


本件うつ病を発病し、同年8月頃までにその症状が憎悪していったのは、第一審被告が、第一審原告において、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等を過度に蓄積して心身の健康を損なうおそれのあること及び既に損なっていた健康を更に悪化させるおそれのあることを具体的客観的に予見可能であったにもかかわらず、第一審原告の業務量を適切に調整して心身の健康を損なうことや更なる悪化をたどることがないように配慮しなかったという不法行為によるものであるとともに、雇用契約上の安全配慮義務に違反する債務不履行によるものであったともいうことができる。

(東芝事件 東京高判 平23・2・23 労判1022)

Aは、過剰な時間外労働に加え、被告会社の資金繰りの調整等を担当したことにより、心理的負担の増加要因が発生していたにもかかわらず、被告会社は、Aの実際の業務の負担や職場環境などに配慮することなく、そのような状態を漫然と放置していたのであるから、このような被告会社の行為は、上記注意義務に違反するものである。

したがって、被告会社には、安全配慮義務違反及び不法行為上の過失があったと認められる。

(メディスコーポレーション事件 前橋地判 平22・10・29 労判1024)

使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことのないよう注意し、もって、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っていると解するのが相当であるところ、本件においては、被告は、雇用主として、その従業員であるAに対し、同人の労働時間及び労働状況を把握・管理し、過剰な長時間労働などによりその心身の健康が害されないように配慮すべき義務を負っていたというべきである。

しかるに、認定したとおり、被告は、Aの労働時間や労働状況を把握管理せず、平成14年2月1日以降、月平均で約100時間もの時間外労働などの長時間労働をさせ、少なくとも平成14年4月には、上司も、Aに活気がなくなったり、同人が意味不明の発言をしたことなどうつ病の発症をうかがわせる事実を認識していながら、Aの業務の負担を軽減させるための措置を何ら採らず、Aにうつ病を発症させて、自殺に至らしめたのであるから、被告には、安全配慮義務違反があったことは明らかである。

(スズキ自動車事件 静岡地判 平18・10・30 労判927)

Aを発憤させることができれば、従前どおりAが勤務を継続することができると軽信して、Aの退職希望を受け入れず、1ヶ月の休暇申出を撤回するよう慫慂(しょうよう)したものというべきであるが、前示のとおりAの精神状態はすでに病的な状態にあって、医師の適切な措置を必要とする状況にあり、このことは一審被告Bにも認識することができたものというべきであるから、一審被告Bには、少なくとも課長職が重荷であると訴えて退職の希望までしていたAが、医師の診断書を提出して1ヶ月の休養を申し出たときには、一審被告会社に代わって部下である一審被告会社の従業員について業務上の事由による心理的負荷のため精神面での健康がそこなわれていないかどうかを把握し、適切な措置をとるべき注意義務に従って、Aの心身の状況について医学的見地に立った正確な知識や情報を収集し、Aの休養の要否について慎重な対応をすることが要請されていたというべきものであるから、一審被告Bにはそのような注意義務に違反した過失があり、また、一審被告会社も同様に従業員の精神面での健康状態についても十分配慮し、使用者として適切な措置を講ずべき義務に違反したものというべきである。

(三洋電機サービス事件 東京高判 平14・7・23 労判852)

確かに、社会保険庁においては定期の健康診断が実施されており、被災者には、健康診断で職務に支障をきたすような健康上の問題は指摘されておらず、メンタル面での健康相談は受診すらしたこともなかった上、平成8年10月1日付の職員現況調書にも健康状態に不安を感じている様子はみられず、仕事に向けた意欲が感じられる内容の記載がなされていた。

しかしながら、職員の健康管理は上記体制的な管理に尽きるものではなく、職員に対して業務上の指揮監督権限を有する者は、職員の日常の勤務状況、職場環境、業務の負担量等について、継続的に的確に業務の把握を行い、健康状態等につき管理する必要があると解される。

(社会保険庁公務災害賠償請求事件 甲府地判 平17・9・27 労判904)

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