病気休職期間満了後の解雇
企業には病気休職制度があり、その休職の期間は、おおむね勤続年数によって異なった期間を設定していますから、病気休職制度がありながら、これを活用しないで行う解雇は無効となります。
しかし、休職期間満了後も回復しない場合には、解雇は正当なものとなるのですが、この場合の争いとなるのは、期間満了時の回復についてです。
<判例>
右休職制度は、被告の従業員が業務外の傷病を理由に3ヶ月以上欠勤する場合に、6ヶ月を限度として休職期間とし、この期間中の従業員の労働契約を維持しながら、労務への従事を免除するものであり、業務外の傷病により労務提供できない従業員に対して6ヶ月にわたり退職を猶予してその間傷病の回復を待つことによって、労働者を退職から保護する制度である、と解される。
したがって、6ヶ月以上の休職期間満了までに従業員の傷病が回復し従前の職務に復職することが可能となった場合には、当該従業員を休職期間の満了をもって退職させることは無効である、と解するのが相当である。
そして、復職が可能か否かは、休職期間の満了時の当該従業員の客観的な傷病の回復状況をもって判断すべきである。
客観的には復職可能な程度に傷病が回復していたにもかかわらず、会社が資料が不十分のために復職が不可能と判断して当該従業員を退職扱いにした場合には、当該従業員の退職の要件を欠いており、退職が無効になる、と解すべきである。
(北産機工事件 札幌地判 平11・9・21 労判769) |
少なくとも、直ちに100%の稼動ができなくとも、職務に従事しながら、2、3ヶ月程度の期間を見ることによって完全に復職することが可能であった(被告において、右期間程度の猶予を認める余裕がなかった、あるいは、原告の月1、2回の通院を認めることによって業務遂行に支障が生じる、との事情は認められないから、信義則上、休職期間の満了後は一切の通院は認められない、とすることはできない)と推認することができるから、休職期間の満了を理由に原告を退職させる要件が具備していた、と認めることはできず、原告を休職期間満了として退職とした取扱は無効である、と解すべきである。
(北産機工事件 札幌地判 平11・9・21 労判769) |
債務者が、債権者の病状について、その就労の可否の判断の一要素に医師の診断を要求することは、労使間における真偽ないし公平の観念に照らし合理的かつ相当な措置である。
したがって、使用者である債務者は、債権者に対し、医師の診断あるいは医師の意見を聴取することを指示することができるし、債権者としてもこれに応じる義務があるというべきである。
もっとも、債権者が、医師の人選あるいは診断結果に不満がある場合は、これを争いうることまでが否定されるものではないが、上記観点からすれば、医師の診断をうけるように指示することが直ちにプライバシーの侵害にあたるということはできない。
(大建工業事件 大阪地判 平15・4・16 労判849) |
被告が開発部門での業務に特殊なものとして主張するところは、主に残業の多さであるが、労働者は当然に残業の義務を負うものではなく、雇用者は雇用契約に基づく安全配慮義務として、労働時間についての適切な労務管理が求められるところ、残業に耐えないことをもって債務の本旨に従った労務の提供がないということはできない。
また、労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。
(キャノンソフト情報システム事件 平20・1・25 労判960) |
運転者として職種を特定して第一審被告に雇用された者であると認められる。
そして、労働者がその職種を特定して雇用された場合において、その労働者が従前の業務を通常の程度に遂行することができなくなった場合には、原則として、労働契約に基づく債務の本旨に従った履行の提供、すなわち特定された職種の職務に応じた労務の提供をすることはできない状況にあるものと解される。
もっとも、他に現実的に配置可能な部署ないし担当できる業務が存在し、会社の経営上もその業務を担当させることにそれほど問題がないときは、債務の本旨に従った履行の提供ができない状況にあるとはいえないものと考えられる。
(カントラ事件 大阪高判 平14・6・19 労判839) |
労働者が職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合においては、休職前の業務についての労務の提供が十全にできないとしても、その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、その社員の配置や異動の実情、難易等を考慮して、配置換え等により現実に配置可能な業務の有無を検討し、これがある場合には、当該労働者に右配置可能な業務を指示すべきである。
(JR東海事件 大阪地判 平11・10・4 労判771) |
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