会社内部告発の判例
会社内部の機密を外に持ち出す行為(内部告発行為)は、誠実労働義務違反として企業秩序違反行為で懲戒の対象となる可能性があります。
しかし、公益に反する企業活動が問題となり、企業の不祥事からコンプライアンスの重要性がいわれるようになり、公益通報者保護法が制定されました。
この法律によって、企業の処罰対象となっていた行為も公益の目的など一定の要件を満たせば処罰してはいけないとなりました。
しかし、この法律によりすべての内部告発者に危険性がなくなくったわけではなく、告発には目的や手段に一定の基準による判断が必要になります。
<判例>
実体は労働者派遣であるにもかかわらず、労働者派遣法の規制を免れようとするいわゆる偽装請負である点でも、また、原告に対する指揮命令をする者と原告を雇用する被告との間に多数の業者が介在する違法な多重派遣の形態である点でも違法であること、本件解雇は、このような違法状態を改善するため、法律上の権利として保護された労働組合活動や監督機関への申告を行った者を企業から排除するという強度の反社会的な行為である。
このような事実からすると、被告は、原告が本件組合とともに、偽装請負を解消し、適法な労働者派遣を行うよう要求し、愛知労働局にその旨の行政指導を求めたことを嫌悪して、原告に対し、本件業務から排除するだけでなく、被告からも排除すべく不利益な処分を行ったものと推認することができる。
(テー・ピー・エスサービス事件 名古屋地判 平20・7・15 労判965) |
会社において労働基準監督法違反等の各事実が存し、かかる会社の経営方針に反対する原告らに対し、会社が長年賃金差別、昇格差別等を行い、原告らを不当に虐げてきたという内容の図書であり、かかる図書を出版することは、少なくとも形式的には就業規則第54条第4号、8号に該当するといえる。
しかし、前述のとおり、懲戒規定が企業の秩序維持のため設けられるものであることに鑑みれば、形式的に懲戒事由に該当するとしても、主として労働条件の改善等を目的とする出版物については、当該記載が真実である場合、真実と信じる相当の理由がある場合、あるいは労働者の使用者に対する批判行為として正当な行為と評価されるものについてまで、これを懲戒の対象とするのは相当ではなく、かかる自由が認められる場合には、これを懲戒処分の対象とすることは懲戒権の濫用となるものである。
懲戒事由とされた部分の大半が事実を記載し、またはかかる記載をすることに相当の理由があること、加えて、会社においてはユニオンショップ制がとられていることから、原告らは組合内の少数派として活動するほかないものであること、原告らの寄稿・出版協力の目的が主として原告らを含む従業員の労働条件の改善を目指したものであることを総合考慮すれば、本件懲戒処分は、処分の相当性を欠き、懲戒権を濫用したもので、無効といわなければならない。
(三和銀行事件 大阪地判 平12・4・17 労判790) |
本件のようないわゆる内部告発においては、これが協議事実により占められているなど、その内容が不当である場合には、内部告発の対象となった組織体の名誉、信用等に大きな打撃を与える危険性がある一方、これが真実を含む場合には、そうした組織体等の運営方法等の改善の契機ともなりうるものであること、内部告発を行う者の人格権ないしは人格的利益や表現の自由等との調整の必要も存することなどからすれば、内部告発の内容の根幹的部分が真実ないし内部告発者において真実と信じるについて相当な理由があるか、内部告発の目的が公益性を有するか、内部告発の手段・方法の相当性当を総合的に考慮して、当該内部告発が正当と認められた場合には、当該組織体等としては、内部告発により、仮に名誉、信用等が毀損されたとしても、これを理由として懲戒解雇をすることは許されないものと解するのが相当である。
(大阪いずみ市民生協事件 大阪地堺支判 平15・6・18 労判855) |
内部告発事案においては、内部告発事実(根幹的部分)が真実ないし原告が真実と信じるにつき相当の理由があるか否か、その目的が公益性を有しているか否か、そして労働者が企業内で不正行為の是正に努力したものの改善されないなど手段・態様が目的達成のために必要かつ相当なものであるか否かなどを総合考慮して、当該内部告発が正当と認められる場合には、仮にその告発事実が誠実義務等を定めた就業規則の規定に違反する場合であっても、その違法性は阻却され、これを理由とする懲戒解雇は「客観的に合理的な理由」を欠くことになると解するのが相当である。
(学校法人田中千代学園事件 東京地判 平3・1・28 労判1029) |
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