職場の同僚のいじめの判例
使用者の意図とは関係なく、職場で起きるいじめ、同僚であったり上司であっても、全く個人的な動機でなされるいじめもあります。
個人的な性的関心によるセクハラや好き嫌いという人間関係から起されるようないじめです。
この場合には、行為を起した相手に不法行為責任を問うことができ、場合によっては、使用者の不法行為責任や債務不履行責任を問うこともできます。
(不法行為による損害賠償)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(使用者等の責任)
民法第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
(債務不履行による損害賠償)
民法第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
これは、管理職(履行補助者)の行為かどうかによって分かれ、履行補助者の行ったいじめであれば、使用者の行ったものとみなされます。
いじめについて、その防止義務は、使用者が労働者に対して負う、労働契約上の職場環境配慮義務ですから、履行補助者ということになれば、使用者同様に義務があり、その義務違反を問うことができます。
履行義務者ではない、同僚のいじめについては、使用者は無関係ですが、「その事業の執行につき」なされたり、いじめに気づきながらあえて放置したりという職場環境配慮義務に違反した場合にはじめて、責任が問われます。
<判例>
被告BらのAに対するいじめは、長期間にわたり、執拗に行われていたこと、Aに対して「死ねよ」との言葉が浴びせられていたこと、被告Bは、Aの勤務状態・心身の状況を認識していたなどに照らせば、被告Bは、Aが自殺を図るかもしれないことを予見することは可能であったと認めるのが相当である。
被告Bは、Aの自殺によって死亡したことについて、損害賠償義務を負うと認められる。
(誠昇会事件 さいたま地判 平16・9・24 労判883) |
被告による一連の行為は、被告が心臓発作を防ぐためたばこの臭いを避けようとしていたことを考慮したとしても、喫煙者である原告A及び原告Bに対するいやがらせ目的をもって、長期間にわたり執拗に原告A及び原告Bの身体に著しい不快感を与え続け、それを受忍することを余儀なくされた原告A及び原告Bの身体に著しい不快感を与え続け、それを受忍することを余儀なくされた原告A及び原告Bに対して著しく大きな精神的苦痛を与えたものというべきであるから、原告A及び原告Bに対する不法行為に該当するというべきである。
被告は第二事業部において、他の従業員が多数いる前で、部下の従業員やその直属の上司を大声で、時には有形力を伴いながら叱責したり、手当なしの残業や休日出勤を行うことを強いるなどして、部下に対し、著しく一方的かつ威圧的な言動を部下に強いることが常態となっており、被告の下で働く従業員にとっては、被告に退職を強要されるかもしれないことを恐れて、それを受忍することを余儀なくされていたことが認められる。
このような背景事情に照らせば、被告による原告Aに対する上記の行為は、社会通念上許される業務上の指導を超えて、原告Aに過重な心理的負担を与えたものとして不法行為に該当する。
(日本ファンド事件 東京地判 平22・7・27 労判1016) |
Aが工業用水課に配属になっておおよそ1ヶ月ぐらい経過したころから、内気で無口な性格であり、しかも、本件工事に関する原告Fとのトラブルが原因で職場にも歓迎されていない上、負い目を感じており、職場にも溶け込まないAに対し、上司である被告Bら3名が嫌がらせとして前記のような行為を執拗に繰り返し行ってきたものであり、挙句の果てに厄介者であるかのように扱い、さらに、精神的に追い詰められて欠勤しがちになっていたものの原告Eから勧められて同課における初めての合同旅行会に出席したAに対し、被告Cが、ナイフを振り回しながら脅かすようなことを言ったものである。
そして、その言動の中心は被告Cであるが、被告B及び被告Dも、被告Cが嘲笑したときには、大声で笑って同調していたものであり、これにより、Aが精神的、肉体的に苦痛を被ったことは推測しうるものである。
以上のような言動、経過などに照らすと、被告Bら3名の上記言動は、Aに対するいじめというべきである。
(川崎市水道局事件 横浜川崎支判 平14・6・27 労判833) |
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