人事権と懲戒権による降格
降格とは、職能資格のよる賃金の格付けを下げることをいい、この降格には人事権によるものと、懲戒権によるものがあるとされています。
人事権による降格というのは、昇進の反対措置で、使用者は人事権として昇進させる権限と同時に、反対に降格させる権限もあると考えられているのです。
ただし、人事権としての降格は、人事権の濫用にあたらないかどうかが問われます。
濫用に当たるとされる場合には、業務上・組織上の必要性があるか、能力・適性の欠如など労働側の問題点の存在、労働者の受ける不利益の程度、などをいいます。
懲戒権による降格というのは、労働者の企業秩序違反などを理由に処分行為として行われるものです。
労働者に対する懲戒処分や人事上の降格処分の手続について就業規則に特別な定めがない場合にもできるとされることから、使用者が懲戒処分及び人事上の降格処分を労働者に告知する際、処分の根拠と理由を文書として交付して告知することを要します。
また、その文書の記載自体から当該降格処分が懲戒処分として行われたものか人事権の行使として行われたものかの疑義を生じる余地がない程度に明白であることが必要です。
判例でも、「裁量判断を逸脱しているか否かを判断するにあたっては、使用者側における業務上・組織上の必要性の有無及びその程度、能力・適性の欠如等の労働者側における帰責性の有無及びその程度、労働者の受ける不利益の性質及びその程度等の諸事情を総合考慮すべきである」(上州屋事件 東京地判 平11・10・29 労判774)とされています。
懲戒の場合には労働者の明白な落ち度が問題にされることに対して、人事上の降格は、使用者の判断で一方的にされることから、十分な説明責任が求められるのです。
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