配置転換や配転命令の無効判例
<判例>
長年それに見合った職務に従事してきた45歳という年齢のAに対し、全く畑違いの業務に従事させる本件配置転換は、平均的な労働者の観点からしても、過度に大きな心理的負荷を与えるものであったといわなければならず、そうすると、本件配置転換が上記のような経緯で行われたことを考慮に入れてもなおそれが合理的であったというには相当の疑問を払拭することができない。
(粕屋農協事件 福岡高判 平21・3・26 労判993) |
使用者に配転命令が認められる場合であっても、転勤は、特に転居を伴うものにあっては、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにおかないものであるから、使用者の配転命令権は、無制約に行使できるものではなく、これを濫用することは許されるものではない。
その配転命令権について、業務上の必要性がない場合、または、業務上の必要性がある場合であっても、その配転命令が他の不当な動機・目的をもってされたものであるとき等の特段の事情のある場合には権利の濫用となり、当該配転命令は無効となるというべきである。
(ネスレジャパンホールディング事件 神戸地姫路支判 平17・5・9 労判915) |
被告は、転勤規定及び借上げ社宅ガイドラインに基づいて、交通費、宿泊費、引越し費用、転勤休暇及び赴任支度料等を支給するとしており、これは、主として経済的側面からは相当程度の援助を尽くしているということができる。
しかし、原告らの受ける不利益は、金銭的なもののみではなく、家族を伴っての転居、または、原告らの単身赴任によって妻や母親に対する援助や介護が困難となるという肉体的または精神的な不利益も含み、むしろ、後者が多大であるというべきである。
これらは、金銭的な援助では補てんし得ない。
それであれば、被告による不利益が通常甘受すべき程度を著しく超えるとの判断を覆すものとは言い難い。
(ネスレジャパンホールディング事件 神戸地姫路支判 平17・5・9 労判915) |
原告らは、単身で赴任するにしても、家族を伴って転居するにしても、いずれにしても経済的、肉体的及び精神的な不利益が相当程度大きく、この不利益は被告の援助によって補てんされる性質のものではなく、その不利益の程度は、本件配転命令にしたがって転勤した者に比べても、それを上回るものというべきである。
以上によれば、本件配転命令は業務上の必要性に基づいてなされたものであるけれども、原告らに対し、通増甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるという特段の事情が認められるから、本件配転命令によって原告らを霞ヶ関工場へ転勤させることは、被告の配転命令権の濫用にあたる。
(ネスレジャパンホールディング事件 神戸地姫路支判 平17・5・9 労判915) |
一般に、使用者は、労働契約の締結によって、労働者の労働力について包括的な処分権限を取得し、これに基づいて、具体的労働の種類・場所を決定して労働者に配置転換を命じることができると解される。
そして、本件では、就業規則10条により配置転換が予定されており、しかも上記で述べたとおり、原告につきバーテンダーの職種に限定するとの合意があったとは認められないのであるから、被告は原告の同意がなくても配置転換をすることができるのが原則である。
ただし、そうであっても、労働者にとってみれば配置転換により就業環境が変化し何らかの影響を受けるのが常であるから、当該配置転換に業務上の必要性がないとか、業務上の必要性がある場合であっても、不当な動機・目的に基づくものであったり、労働者にたいして通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせたりするなど、特段の事情がある場合には当該配置転換は権利の濫用となり効力を有しないというべきである。
(藤田観光事件 東京地判 平16・11・15 労判886) |
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