職場のいじめの判例
リストラなどの退職強要で、労働者の人格を無視するさまざまな事件が問題となり、仕事を取り上げられたり、職場から隔離されて別室勤務を命じられたり、草むしりなど見せしめ的な業務命令が出されるなど、非人間的ないじめが問題になったことがあります。
使用者には労働者が仕事を快適な環境で取り組めるための就業環境配慮義務があり、労働者は違法な就業環境になっているのであれば、こうした状況を改善することを要求し、使用者はそうした要求に応える義務があります。
使用者の意図も入ったいじめは、仕事と渾然一体となって行われることになり、裁判でも争いの争点となるのは、それが業務命令として妥当なものかどうか、その目的や業務上の必要性は本当にあったのかなどです。
<判例>
除草作業自体が下車勤務の一形態として適法であると認められるものとしても、所長の一存で、期限を付さずに連続した出勤日に、多数ある下車勤務形態の中から最も過酷な作業である炎天下における構内除草作業のみを選択し、病気になっても仕方がないとの認識のもと、終日または午前あるいは午後一杯従事させることは、人権侵害の程度が非常に大きく、安全な運転をできないおそれがある運転士に乗車勤務復帰後に安全な運転を行わせるという下車勤務の目的から大きく逸脱して、むしろ懲罰の色彩が強い。
(神奈川中央交通バス事件 横浜地判 平11・9・21 労判771) |
吹田工場では、安全確保が要請されている状況にあったとはいえ、その必要から、本件作業が指示されたものと認めることができる。
しかしながら、本件作業は、最高気温が摂氏34度から37度という真夏の炎天下で、日よけのない約1メートル四方の白線枠内に立って、終日踏切横断者の指差し確認状況を監視、注意するというものであって、1時間に5分という休憩時間が与えられ、随時、トイレに行ったり、氷を取りに行くことが可能であったとはいえ、著しく過酷なもので、労働者の健康に対する配慮を欠いたものであったといわざるを得ない。
その内容等において使用者の裁量権を逸脱するものであったといわざるを得ない。
(JR西日本吹田工場事件 大阪高判 平15・3・27 労判858) |
上司と男女関係にあるという、事実に反する社内でのうわさ話について事態改善の求めがあったにもかかわらず特段の措置をとらなかった。
過度の勤務状況に対する改善を申し出ていたにもかかわらず、長期間にわたり人員補充などの適切な措置をとらず、過重な勤務を強いた。
約2ヶ月にわたり具体的な仕事を与えず、また不合理な座席の移動を命じるなど繰り返し嫌がらせをした。
原告のみに再就職のあっせんについての希望の有無を問うことなく、あえて他の従業員よりも先に解雇した。
(国際信販事件 東京地判 平14・7・9 労判836) |
本件職員会議においては、被告Bらが中心となって、自ら、U労組を脱退した原告を非難、糾弾する発言をしたばかりか、原告を非難、糾弾する発言をするように、本件職員会議に参加した職員らを誘導、扇動し、その結果、本件施設の職員の多くが、原告を非難する内容の発言をしたものであり、本件職員会議は、ユニオンに加入した原告ら及びユニオンに対して、危機感、警戒感及び嫌悪感を抱いた被告Bらがユニオンに加入した原告を非難、糾弾する意図で進行されたものといえる。
そして原告は、本件職員会議において非難、糾弾された結果、認定するとおり、精神的疾患に罹患し、休職を余儀なくされたものである。
被告Bらは、いずれも被告法人の職員であり、また職員会議が被告法人の施設単位で行われる会議であり、施設長によって主宰されるものであることに照らせば、本件職員会議における被告Bらの不法行為が、被告法人の事業の執行についてなされたものであることは明らかである。
(U福祉会事件 名古屋地判 平17・4・27 労判895) |
労働者を解雇する場合、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することのできない場合には、当該解雇は権利の濫用として無効となるというべきである。
この見地から上記事情を改めて検討するに、これらの事情は、上司との意見の対立や行き違いを原因とするものにすぎないなど、社会通念等の観点からして重大な問題であるとまでは言い難いこと、被告の業務に支障をきたした程度も、社会通念上さほど重大なものとはいえないこと、本件全証拠をみても、被告は、本件第一けん責処分後に限っても、一連のけん責処分に対する原告の反論や対応を見極めて、原告と対話するなどといった方策を講じたとは認めがたいこと、被告においては、労働契約関係を維持したままする、けん責を上回る程度の懲戒処分として、減給、出勤停止等があるが、弁論の全趣旨によれば、被告には、本件第四けん責処分の後であっても、このような懲戒処分を行うことに特段の支障はなかったと認められること、以上の点にかんがみれば、本件解雇の解雇理由となるべき事情を総合考慮しても、本件解雇は権利の濫用として無効であると解するのが相当である。
(カジマ・リノベイト事件 東京地判 平13・12・25 労判824) |
けん責とは、失敗や不正などを厳しく咎めること、または、組織における懲戒処分の方法のうち、始末書を書かせるなどして強く戒めること、懲戒解雇や出勤停止といった一連の懲戒処分の中では、けん責処分は最も軽微な処分であるといえる。
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