セクハラで就業規則にない懲戒処分
<事例>
課長の太郎さんは日頃から部下の女性社員に対して卑猥な言動をとることが多く、陰では「セクハラ課長」と言われていました。
太郎さんは、最近、以前にも増してひどいセクハラをするようになり、女性社員は我慢できなくなり太郎さんをクビにするよう社長に直訴しました。
社長はとりあえず太郎さんを課長から外し、男性社員ばかりの課に配転し、身分もヒラの課長補佐としました。
太郎さんは就業規則に根拠のない降格は無効な懲戒処分として、元の課長職に戻すよう主張しました。 |
会社が社員に対して懲戒処分を行う場合には、必ず就業規則などの根拠が必要ですが、本件の場合、会社には降格に関する懲戒処分の規定はありません。
降格には、人事権にもとづく人事異動として行われる場合と、懲戒権にもとづく懲戒処分として行われる場合があります。
管理職者が、成績不振または適格性が欠けているという理由でヒラ社員に降格されるようなことがあれば、これは人事権行使の一部であり、会社の裁量に任される処分だといえます。
一方、管理職者が背信的行為などを行ったために制裁を加える意味でヒラ社員に降格されることにならば、懲戒処分にあたります。
太郎さんの場合、セクハラ行為に対する懲罰的な意味も含まれているのかもしれませんが、それ以前に、課長として部下を統率する能力に欠けていると会社が判断したため、人事異動として管理職を解任したものと考えられます。
ですので、この降格は懲戒処分ではなく、人事異動として行なわれたものであるため、就業規則の根拠規定は必要とされないのです。
しかし、人事権は、労働契約にもとづいて会社に認められた権限であり、契約の本旨から外れるような権利の濫用は認められません。
太郎さんは女性社員にセクハラを訴えられていましたが、雇用機会均等法では次に分類しています。
@対価型
職場における性的な言動にその労働者が対応することで、労働条件の不利益を受けること。
A環境型
職場における性的な言動によって、その労働者の就業環境が害されること。 |
会社はこうした状態を放置していると、被害を受けた女性社員から不法行為の責任を追及されることになり、これを回避するには、実際に上司が部下にセクハラを行なっているような場合には、適格性を欠くと判断した上司を解任するのは当然であると考えられます。
太郎さんは誰の目にも手に余るセクハラを行なっていたのですから、降格処分は人事権の濫用とはいえず、有効な処分と考えられるのです。
それどころか、太郎さんは、会社内の風紀・秩序を著しく乱す行為ということで懲戒解雇になる可能性もあるのです。
事業主がセクハラを放置していた場合、男女雇用均等機会均等法の義務違反を問われ、また、被害労働者からの訴えがあれば、民法の使用者責任・不法行為により、損害賠償の責任を免れないのです。
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